学校であった怖い話
>一話目(細田友晴)
>A2

「このままじゃ、試験どころじゃないよ。入ろう」
「……そうだね」
彼は、何だかホッとしたように見えた。
かなり、我慢していたんだろうね。
僕たちは、一歩踏み出した。

すると、ザワザワッと手がうねったんだ。
僕たちを見つけて、喜んでいるようだった。
波にそよぐイソギンチャクみたいに、無数の手がざわめいていた。

こいつらは、僕たちを待ち受けているんだ。
捕まったら、なにをされるかわからない。
「…………やっぱり、やめとこう」
そういって帰ろうとしたとき。

「うわわあっ」
奇妙な悲鳴をあげて、中野が僕につかまったんだ。
バランスを崩して、転びかけちゃってね。
ちょっとムッとして、彼を見た。
そしたら…………彼の脚に、数本の手が絡みついていたんだよ。

彼は、泣きそうな顔で僕を見ていた。
オロオロする僕の前で、手はずるずると中野を引っ張って、トイレに引きずり込もうとし始めた。

中野は僕にしがみつく。
このままじゃあ、僕まで引きずり込まれてしまうかもしれない。
どうしよう?
1.中野を追い払い、逃げ出す
2.中野を引っ張って、一緒に逃げる