学校であった怖い話
>一話目(細田友晴)
>H5

彼は、あの試験が終わるまで試験会場に入れないわけだから、どこかで待っているに違いない。
トイレの辺りには、いなかった。
まあ、いつまでもこんな不気味なところにはいないよな。
三時間目のあとは昼休みだったので、僕はいろいろと捜したのさ。
けれど、中野の姿は見当たらなかった。

もっとも、ものすごい人だったから僕が見落としてたとしても不思議はない。
中野だって、僕のことを捜していたかもしれないからね。
すれ違いってこともありうる。

僕は、仕方なく会場に戻り、そこでも彼の姿を捜したんだ。
だけど、彼は見つからなかった。

そして、彼の姿が見つからないまま四時間目の試験が始まったのさ。
彼は、戻ってこなかった。
彼の席は空席のまま、試験は続けられた。
試験が始まると、途中入室も許されない。
彼は、どこにいってしまったのか、そのまま試験を放棄してしまったんだよ。

僕は、変な胸騒ぎを覚えた。
もしかして、彼に何かあったんじゃないか……と。
四時間目の試験が終わり、気になってもう一度あのトイレに行ってみたのさ。

すると、どうだ。
また、あの手がトイレから伸びているじゃないか。
風になびくようにゆらゆらと揺れながら、手は僕のことを誘っているようだった。
そういえば僕は、トイレをよく捜そうとはしなかった。

もしかしたら、中野はまだこの中にいるのかもしれない。
なぜか、そんな気がしてならなかった。
確かめようか?
どうしようか?
1.トイレに入る
2.トイレには入らない