学校であった怖い話
>一話目(岩下明美)
>G7

どういう意味だか教えてほしい?
それなら本人に聞けばいいわ。
内山君。
内山君、そこにいるんでしょ?

………。
ノックの音がした。
空気が張り詰める。
又、ノック。
誰だ?
又もやノック音。今度は、少し乱暴に。

「坂上、ちょっと開けろよ」
誰かが言った。
ドアの向こうに、内山くんが?
タイミングが良すぎないか?
「坂上、早く開けろ」

僕はドアを開けたが、そこには誰もいなかった。
「なにしてるの?」
岩下さんが言った。
「なにをボーッとしてるの?
早くこっちに来て、話の続きをするのよ」

振り向くと、僕のいた席に内山君が座っている。
いつのまに?
内山君は、口をモゴモゴと動かした。
「この部屋は居心地がいいんだって」
彼女が僕に耳打ちした。
内山君が又口を動かす。

「クラスメートのことが憎かったんだって」
彼女が又耳打ちした。
「でも、坂上君のことは好きなんだって」
内山君は座っている。
僕の席に座っている。
「なんて顔してるの?」
彼女が言った。

「坂上君、なんて顔してるの?
好きっていっても、別に恋愛感情があるとかそういう意味じゃないのよ。
お友達になりたいって意味。
内山君は、クラスのみんなとお友達になりたいんですって。

まずは、あなたから。
だってあなたって、おとなしくて優しそうじゃない。
悪霊がとりついてるなんて、思えないくらいにね。

ああ、ごめんなさい。
私、内山君の言ったことを信じてるの。
内山君のクラスのみんなに、悪霊がついてるってことをね……」
彼女は何を言っているのだろう。
部室内に異様な空気が流れている。
しかしだれも何も言わない。

なぜだ?
誰も何も言わない。
そしてみんなは僕の席を見ていた。
内山君が座っているはずの、僕の席を……。
「坂上、なぜ座らないんだ?」
誰かが口を開いた。

何を言っているのだろう。
座ろうにも、僕の席には内山君が……。
僕は息をのみ、岩下さんに目を向けた。
彼女はゆっくりとうなずいた。

「今、坂上君の席に内山君が来てるわ。
みんなには見えないかしら?
内山君はもう、この世の人ではないからね。
そう、内山君は悪霊に負けたの。
悪霊のひどい仕打ちに負けて薬を飲んだの。

たくさん飲めば永遠の眠りにつける薬をね。
一粒一粒飲みながら、お母さんや、大好きだった昔の友達に別れを告げて。

そしてその後に、クラスメート達の顔を思い浮かべながら……。
だけど、内山君は天国に行けなかった。
悪霊のせいだと分かってても、クラスメートが憎かったのよ。

でも、それじゃあいけないって思った。
内山君は、そんなふうに考えちゃいけないって思ったの。
そこで、クラスメートと友達になろうと思った。

今なら。
今なら内山君も霊だもの。
悪霊のとりついてるクラスメートとお友達になれるんじゃないかって、そう思ったの。
……まずは、あなたからよ。
あなたとは、霊になる前からお友達になりたかったんですって。
いいでしょう?
内山君と、お友達になるわよね?」

内山君は、おとといから学校を休んでいた。
彼女の言うことは本当だろうか?
本当なら、なぜ彼女はそんなことまで知っているのだろう。
……友達になったのか?
彼女は内山君と、友達になったのだろうか。

彼女は僕のクラスメートではない。
だけど、どこかで内山君の話を聞いて、友達になろうと決めたのだろうか。
「内山君がこんなにしてまで友達になりたいって言ってるのに、断るクラスメートがいたら……。
きっとただでは済まないわね。

さあ、返事を聞かせて。
あなたは内山君と、友達になる?」
1.友達になる
2.断る