学校であった怖い話
>二話目(新堂誠)
>A2

そうだろ、そうだろ。
その気持ち、すごくわかるぜ。
俺は、甘いものが好きってほどじゃないが、うまいもんなら話は別だ。
でもな、商品名も何も書いていない、よれよれのビニールに包まれた飴だから、初めは嫌がる奴のほうが多かった。

せっかくもらっても、捨てちまう奴がほとんどだった。
だって、そりゃそうだよな。
気味の悪いばあさんに、わけのわからない飴をもらうんだ。

材料だって何を使ってるかわからないし、もしかしたら毒かもしれない。
普通、捨てるよな。
それでも、物好きがいるもんでな。
食べた奴がいるわけよ。

もっとも、噂じゃあ、あの飴を初めて食べた奴はものすごいいじめられっ子で、ずっと自殺を考えていたんだってよ。
それで、毒でもいいと思って、死ぬ気でその飴を食べたんだと。

そしたら、どうだ。
その飴のうまいこと、うまいこと。
まるで、この世のものとは思えぬうまさ。
この世に、こんなうまいものがあったのか、ってなもんだ。
それで、生きる勇気がわいてきたってわけよ。

それからは、いじめられても抵抗するようになり、その上、見違えるほど明るい奴になっちまったんだ。
それで高校を卒業すると、調理学校に入り、今じゃあフランスにある四つ星レストランのシェフになったそうだ。

たった一粒の飴が、人間の人生を変えちまったんだよ。
ま、あくまで噂だけどな、噂。
それでも、すごい話だろ?
どうだ?
お前、飴玉ばあさんに会ってみたくなったろ。
1.会いたい
2.別に会いたくない