学校であった怖い話
>二話目(新堂誠)
>F4

ここまできてそんなこというのか?
……まあいいさ。
自分の幸せは、自分でつかむってのかい?
それも、いいかもしんねえな。

けどよ、しょせん人間にできることなんて限度があるんだぜ。
無理して頑張って、叶うはずもない夢を追いかけるのもいいよ。
それで、自分の夢が叶えられるやつなんて、たった一握りなんだぜ。

欲がねえやつだな。
でも、お前がそういうんだったらそれでもいいさ。
飴玉をもらったやつらの中にも、こんな話があるからな……。

当時、一年生だった片桐里子は、とても美人とはいえない容姿で、体型も決してスマートではなかったんだ。
洋なし体型っていうのか?
けど、優しい子でな、みんなには好かれていた方だと思うぜ。

彼女には、原恵利子っていう親友がいたんだ。
この子は、そこそこにかわいい子なんだけど、性格超悪くてさ。
まったく、よくこの二人が一緒にいれるよなーってみんな言ってたよ。

いや、俺が見たわけじゃないんだけどさ。
片桐は、原の引き立て役みたいだったんだ。
そして原は、それに優越感を感じて満足してたんじゃないのかね。
ホント、嫌なやつだぜ。

ある日、下校の際片桐が掃除当番の原を校門で待っていたんだ。
「お前さん、誰か待っておるのかえ?」
「は、はい、ちょっと友達を」
片桐はちょっとビビってしまった。
いきなりあの風貌のばあさんに、後ろから声をかけられたら誰だってビビるけどな。

「じゃあ、その友達が来ないうちにあんたにあげたい物があるんじゃ。ほれ、これじゃ」
しわだらけの手で、彼女の手をつかみ何かを握らせたのさ。

「……、飴?」
手を開いてみると、包みがよれよれのゴルフボールくらいのでかい飴玉だったんだよ。
「お前さんは、心根が優しい子と見た。お前さんの様な子は、もっと幸せにならんといかんてのう。お前さんにつきまとっておるハンデを取ってあげるぞえ。ひひひひ」
「はあ……」

そういって、ばあさんはひょんひょんと跳ぶようにしてどこかへ行ってしまったんだ。
「なんなのかしら、あのおばあさん……」

「里子! なによ、ぼーっとしちゃってさ」
「うん、実はね……」
といって、さっき起こったことの一部始終を話した。
「それが、これなのよ」
「やだあー、きったなーい、なんでそんなもの受け取るのよ。早く捨てちゃいなさいよ」

「うん、でも一応とっとく。なんか気になるし……」
「もう、勝手にしなさいよ。とっとくんだったらさっさとしまいなさい、気味悪い」
片桐は、鞄に飴を押し込めた……。
そして、原とのバカ話に花を咲かせているうちに、すっかりさっきのおばあさんのことも忘れてしまったんだ。

家に帰り、明日の授業の予習をしていると、
「あれ、私鞄から出したっけ」
見ると、机の右端に飴が置いてある。
「さっき、ノート出すとき落ちちゃったのね」

飴を手に取り、おばあさんのことを考えたんだ。
「でも、ちっともヤナ感じしなかったのよね。
なんでかしら……。ま、いっか。お腹すいたから、舐めちゃおうかなー」
そして、思い切ってポイッと口の中に入れたんだよ。

「もうー、なんておいしいのかしら。生きてて良かったって思うわあー。捨てなくて正解ね!」
最後まで味わうと、幸せな気分のまま歯も磨かず寝てしまったんだ。
不思議なことが起こったのは、それからだった。

「ねえ、里子。なんか、やせたんじゃない?」
「そうなの! ダイエットとか、特別してるわけじゃないのに、だんだんやせてきちゃったの」
そうなんだ、すっかりやせて肌もつるつるになっていったんだよ。
不思議だろ。
そして、見違えるほどきれいになってしまったんだ。

「何か片桐、きれいになったよなー」
男子生徒の人気もうなぎ登りだ。
面白くないのが、原だろうな。
ある日、片桐を問いつめたんだ。
「何か秘密があるんじゃないの?
教えなさいよ!! 親友でしょ?」
1.本当のことを話す
2.教えない