学校であった怖い話
>二話目(新堂誠)
>A4

俺も、そう思う。
お前は、正直な奴だな。
そんな魔法のような飴があったら、なめたくないって奴は、うそつきだよな。

それでさ、佐久間昇って奴がいたんだよ。
付き合い下手っていうか、わがままな奴でさ。
自分の思い通りにならないと気がすまない奴。
自分中心に地球が回ってると思ってる奴だよ。
大した奴じゃないんだけどな。
嫌な奴だよな。

ま、もっとも俺も会ったわけじゃないから、噂にしか過ぎないんだけどね、ははは……。
それで、そいつは表面上は興味なさそうな顔してたわけ。
「おまえら、馬鹿じゃん? 何、飴玉一つで騒いでんの? ガキだねえ、まったく」
なんてことを言ってたわけ。

そりゃあ、内心はメチャクチャほしかったんだよ。
その、魔法の飴玉が。
それがみんなにわかってるもんだから、誰も佐久間を相手にしなかったわけ。
俺だって、そんな天のじゃくな奴、つき合いたくないもんな。

それで、佐久間はいつも学校の側で、飴玉ばあさんを待ってたんだってさ。
誰にも見つからないようにして。
そりゃあ、辛抱たまらなかったろうよ。
雨の日も風の日も、それこそ雪の日も、電柱の物陰に隠れて、待ってんだぜ。

テレビでやってる張り込み中の刑事みたいにさ。
そいつ、それだけの根性があったんなら、刑事になればよかったんだよな。

佐久間は待った。
必死に待ち続けた。
それほど飴玉がほしかったわけだ。
「今日もだめか……」
陽も完全に落ちちまって、もう学校から帰る生徒もいなくなった。
佐久間は、また明日に望みを託し家に帰ることにしたんだ。

「お前さん、一人かえ?」
帰ろうとしたら、突然、後ろから声をかけられたんだ。
振り向くと、そこに赤いフードを目深にかぶったおばあさんが立っているじゃないか。

飴玉ばあさんだ。
さっきまで誰もいなかったのに、煙のように現れたんだ。
「あ、飴玉ばあさん!」
佐久間は、思わず叫んじまった。

ばあさんは、ガラスを爪で引っかいたような嫌な声で笑ったのさ。
「……いっひっひ、……いかにも。お前さん、あたしのことを待ってたんじゃろ?」
佐久間は、なんて答えたと思う?
1.待っていた
2.別に待っていない