学校であった怖い話
>二話目(荒井昭二)
>A5

懐中電灯のスイッチを入れると、ふっと視界に明かりが広がり安心感が広がります。
しかし、またその安心感をかき消すように不安な気持ちが広がってきます。
「これじゃ、自分の居場所を相手に教えてるようなもんだな」

しかし、懐中電灯を消してしまったら、何かあったときに困ります。
その時、何か後ろに気配を感じて、
「誰だ!!」

桜井先生は、振り向くやいなや、そいつの顔があるであろう辺りに懐中電灯を向けました。
しかし、そこには誰もいません。

とっさに逃げたのかと思い、辺りに明かりを散らしましたが、人影はありませんでした。
とっさに逃げたとしても、その瞬間は肉眼で捕らえられるはずですし、それなりのスピードで動けば、床板がきしまないはずはない。それなのに、そういった気配は全く感じられませんでした。

「……おかしいな」
桜井先生は首を傾げると、明かりを照らしている辺りに、ゆっくりと足を踏み出しました。

その時でした。
また、もう一つの足音が聞こえ始めたのです。
……桜井先生の真後ろから。
桜井先生は驚いて、足を止めました。
すると、もう一つの足音も止まったのです。

いつの間に、自分の背後に回ったのだろうか。
桜井先生は、懐中電灯を握りしめる手が、がたがたと震えだすのを押さえ切れませんでした。
それでも確かめなければならない。
もし、自分の背後にそいつがいるとしたら、何としてでも確かめなければならない。

そんな使命感にかられ、桜井先生は口にたまった唾をゴクリと飲み込みました。
しかし、怖くて怖くて仕方がないのも事実でした。
1.振り向く
2.振り向かずに逃げ出す