学校であった怖い話
>二話目(荒井昭二)
>D5

「誰だ! 誰かいるんだろ!」
桜井先生は、たまらず大声を張り上げたんです。
誰もいない学校だったからよかったものの、もし住宅街であんな声を張り上げたら大騒ぎになっていたかもしれませんね。
それほど、大きな声だったのです。
しかし、答えるものはいませんでした。

「わかってるんだ!
出てきなさい!
いま出てくれば、私のほうも事を荒立てるような真似はしない!」
桜井先生は、さっきよりも大きな声で怒鳴りました。

まるで、旧校舎は笑っているかのように振動しました。
もちろん、桜井先生の声に答えるものはいませんでした。
再び、静寂がやってきました。
「……そうか。そっちがその気なら、もう私も容赦しない。覚悟はいいんだな!」

桜井先生がそういったのは、自分を勇気づけるためです。
まるで、自分に対して覚悟はいいなと、問いかけているようでもありました。
そして、あの明かりが見えた教室に向かってゆっくりと歩き始めたのです。
その時でした。

桜井先生は、足を止め、耳を澄ませました。
空耳だろうか?
……そうだ、きっと空耳だ。
そして、また歩き始めました。
なのにまた、すぐ足を止める。
……空耳だろうか?
桜井先生は、どうしても、もう一つの足音が聞こえたような気がしてならなかったのです。

自分が歩くたびに、それに合わせ床板がきしむ。
それとは、少しずれてもう一つの音が聞こえるのです。
床板を踏むギシギシという音が。
しかも、自分の背後から。
桜井先生は、背中に氷水を浴びせられたようにゾクリとしました。

いつの間に、背後に回られたのだろうか。
もし振り向けば、後ろに回った侵入者は襲いかかってくるかもしれません。
振り向こうにも、振り向けませんでした。
そして、このまま気づかない振りをして、反撃のチャンスを狙おうと思ったのです。

桜井先生は、ゆっくりとまた歩き始めました。
……ギシギシ。
……ギシギシ。
それに合わせて、キィキィというもう一つの床板を踏む音が、確かに聞こえてきます。
それも、間違いなく自分の背後から。

桜井先生は、もう一度、足を止めました。
すると、やはりもう一つの足音も止まるのです。
……間違いない。
侵入者は背後にいる。
桜井先生は、確信しました。

さて、このまま、いきなり振り向いて飛びかかっていいものかどうか……?
1.振り向いて、飛びかかる
2.振り向いて、懐中電灯をつける
3.振り向かず、このまま様子を見る