学校であった怖い話
>二話目(細田友晴)
>B6

ひどいことをするものさ。
西条は、その女の子に、あの壁の染みをなめさせたのさ。
女の子は、もちろん嫌がった。
それでも、いうことを聞かないとあとが怖いからね。
彼女は泣きながら、言われた通りにしたよ。

「きったねぇ! こいつ、トイレの壁なんかなめやがんの! この染みって、何かお前の顔に似てるよね。あはははは!」
西条は、そんなことをさせておきながら、そういって、その子のことを笑ったのさ。
その次の日からだった。

西条が、学校に来なくなったんだ。
そして一週間が過ぎ、一ヵ月が過ぎ、西条は学校をやめてしまったんだよ。
何でも、大病を患って、入院しているということだった。
そのころから、西条をリーダーとしたいじめっ子グループは、めっきりとおとなしくなってしまったんだ。

何でも、仲間の一人が、西条の見舞いに行ったら、彼女の顔一面にひどい染みができていたんだってさ。
その染みは、あのトイレにあった染みに、そっくりだったらしい。
西条の顔の染みはどんな治療をしても消えず、それからは誰とも会いたがらなくなって、それきり消息不明になったそうだ。

家族も、遠くへ引っ越していったらしい。
みんな、あのトイレの染みの呪いだと、噂しあった。
西条には災難だったかもしれないけれど、自業自得だよな。

それからしばらくの間は、いじめもなくなったそうだし。
比田先生は、そう話してくれた。

話している間中、伏目がちだった。
そして、話し終わると長いため息をつき、付け加えたんだ。
「……だから、あのトイレの染みは悪い霊じゃないの。いじめられている子たちを助けてくれる、いい霊なのよ。

もし、あの染みに何かしようとしたら、きっと呪われるわ。みんなが何もしなければ、別に害はないわ。だから、あのままそっとしておいてくれる?」

比田先生は、みんなに返答を求めたんだ。
なんて答えればいいんだろう。
1.そっとしておく
2.除霊すべきだ