学校であった怖い話
>二話目(岩下明美)
>C12

振り落とすですって?
あんたさっき約束したじゃない。
彼女のことを離さないって。
そういったでしょう。
もう許せない。

あんたは、彼女を振り落とした。
そして廊下を走ったの。
とにかく前へ。
彼女は、追いかけて来た。
あなたの後ろから、虫の鳴くような異様な声が聞こえたわ。

金属をこすり合わせたような、かん高い声よ。
それは彼女の叫び。
あんたは、必死で走った。
彼女から、逃げようとした。
でも、彼女の叫びはやまない。
追いかけて来る。
追いかけて来る。
追いかけて来る。

……………………………………… ……………………………………… ……………………………………… ………追いかけて来る……。
この廊下は、無限に続くの。
いくら走っても、逃げられないわ。
隠れることもできない。
乗り物にものれない。
あるのは廊下だけ。

どこにも逃げられないの。
うふふ……。
彼女はあんたを追いかけた。
いつまでも。
いつまでも。
いつまでも。

さっきまで足が痛いっていっていたのに。
いくら早く走っても、追いかけてくる。
彼女の叫びが、聞こえてくる……。
耳元で聞こえてくる。

熱い息がふきかかる。
首筋にふきかかる。
手がのびてきた。
あんたの肩をつかんだ。
何かの手があんたの肩をつかんだ。

「離さないで……」
背中には、なにかの気配。
何かが、あんたの背中にしがみついている。
「離さないって、いったわよね……」
1.振り落とす
2.今度こそ離さない