学校であった怖い話
>三話目(新堂誠)
>Q2

そうか。
でも、やりたいと思うことはあるだろう?
思わないんなら、男じゃないぜ。いいか、坂上。

おまえがもしこの学校で、スポーツを始めようと思っているなら……。
ちょっと、注意しておきたいことがある。
うちの学校では、スポーツをやっている人間が、様々な霊体験をしていてな。
ヤバイことがいろいろあるんだよ。

スポーツは、己の限界に挑戦するものだろ?
真剣勝負じゃないか。
だから、スポーツマンの情熱は、ものすごいものがある。
知ってるか?
人間の念が強いと、霊に狙われやすくなるんだよ。

強くなりたいとか、誰かを追い越したいとか、そんな心の隙をついて悪さをする霊がいるからな。
それを避ける為には、霊をはねのける強い心が必要になる。
坂上、おまえもそういう心を養うようにしろよ。

霊現象が起こりやすいからって、スポーツ部に入らないというのもばからしいからな。
まあ、いくら強い心の持ち主でも、罠に落ちることはいくらでもある。
だから強い心に加え、注意力も必要になってくるんだが……。
ある、スポーツマンの話をしてやろう。

うちの学校の男子バレーボール部が、夏の合宿に行ったんだ。
合宿所は、うちの学校の施設なんだけどな。
学校が買った土地にあった建物を、そのまま利用したものなんだ。
それは山の中にあって、昔学校として使われていたらしい。

木造で、今にも壊れそうなぼろい建物さ。
だけど、学校だっただけあって、体育館があるからな。
部の合宿所として、よく使われているんだ。

……。
おまえも、スポーツ部に入ったら、合宿で行くことがあるかもな。
あそこは雨漏りがするし、しみだらけの壁があったりして、すごく不気味なんだぜ。
そこに布団を敷いて寝泊まりするってんだからよ。
スポ根するにはぴったりの場所かもな。

でも、そこに合宿にいくと、よくでるとかいう話を聞くな。
何がでるかって?
霊にきまってんだろ。
女の泣き声が聞こえるとか、うめき声がするとか、壁に人型の染みがあるとか、みんないってるよ。

それで、男子バレーボール部の合宿なんだけどな。
………。
合宿は、無事に終了したんだ。

だが、学校に帰ってきた時、ボールが一個増えていたんだよ。
部の備品を整理していた一年生は、何だか変だと気付いてはいた。
だが、気のせいかもしれないと思って、誰にもそれをいわなかったんだよ。
事件は、それから始まった。

部活動の最中に、ケガ人が多発しだしたんだよ。
最初は転んですりむいたり、足をくじいたりする程度だったがな。
時がたつにつれ、アキレス腱を切ったり、骨を折ったりする事故が起きだしたんだ。
それが一ヶ月くらい続いてな、みんなは何だか変だと思いはじめた。

それで、部員は考えた。
男子バレーボール部のケガ人がではじめたのは……。
合宿から……帰ってきた頃だと。
そんなある日、他校との練習試合があったんだ。
うちの学校に、近くの高校のバレーボール部を呼んでおこなわれたんだが……。

その時、他校の生徒がケガをしてしまったんだ。
うちの学校の部員が、試合中誤って、その生徒の目に指をつっこんでしまったんだよ。
まあ、目の表面に傷がついただけで大事にはいたらなかったけどな。

そのことがあってから、部の一年生が、怪しいのはボールだといいだしたんだ。
合宿から帰ってきたら、ボールが一個増えていたってな。
合宿所にボールなんかあっただろうかと、みんなは首をかしげた。
でも、それが本当なら、ボールをどうにかした方がいいという結論に達したんだ。

あの合宿所にあったボールなら、呪われていてもうなずけると、みんな思っていたからな。
だが、部で保管しているボールは二十個ぐらいあった。
その中で、どれが余分な一個なのかなんて、わかるもんじゃない。
それでも、これ以上事故が起きたら困るからな。

念のため、その時男子バレーボール部にあったボールを、全部捨ててしまったのさ。
そして、新しいボールをまた二十個買いそろえたそうだ。

すると、それからぴたっと部活中の事故がやんだんだよ。
不思議なことがあるもんさ。
みんなは、口々に怖い事件だったといいあったよ。
ところが……。

それから二週間くらいたったある日、また部のボールが一個増えていたんだよ。
今度は、どれが増えたかはっきりわかった。
新しく買ったボールの中に、一個だけ古く汚いボールがまじっていたんだからな。

そう、呪われたボールがまた戻ってきたのさ……。
1.お祓いをする
2.ボールを再び捨てる