学校であった怖い話
>三話目(細田友晴)
>B8

「……はあ。ありがとうございます」
僕は礼だけ言って、手を出さなかった。
飲まないのは失礼かもしれないけれど、得体の知れないものはやっぱり怖いからね。
竹内さんも、それ以上勧めることはなかったし。

それからかなりの時間が過ぎても、僕の緊張がほぐれることはなかった。
それよりも、時間が経てば経つほど緊張していく感じだった。
「細田君は、僕の噂を聞いたことがあるだろう?」

竹内さんは、唐突にそんなことを言ったんだよ。
噂といったら、一つしかない。
僕は、黙ってうなずいた。

「実を言うとね。その噂は本当なんだよ。僕はトイレに行ったことがないんだ。トイレに行く必要がないからね」
さも当たり前のように言われてしまうと、逆にこっちも妙に納得してしまうものさ。
僕は、何だかそれが当たり前のように思えてしまった。
それでも、竹内さんと僕は違う。

そんな話をしていたせいか、何だか急にトイレに行きたくなってきてね。
「……あのう。トイレは?」
その時、竹内さんは妙な笑い方をしたんだ。

「トイレね、家にはないんだよ。この家の住人は誰もトイレに行かないからね。ごめんよ。
……我慢できないんだったら、そのお茶を飲むといいよ」
そして、あのサンブラ茶をあごで指したのさ。

家にトイレがないって?
そんな話、信じられるかい?
しかも、トイレに行かないのは竹内さんだけじゃなくて、この家にいる人全員だっていうじゃないか。
僕は驚いて言葉を失ったよ。

「そのお茶はね、健康にとってもいいんだ。
体の不浄物をすべて取り除いてくれる効果があってね。本来は排泄物となるものを汗に変えて、全身の毛穴から出してくれるのさ。だから、どんなに食べても太ることはない。それでいて、健康にもいい。すばらしいだろ?」

そんなことを言い出した。
どうする?
お茶を飲んでみようか?
1.飲む
2.飲まない