学校であった怖い話
>三話目(細田友晴)
>J6

「あの…トイレに行きませんか?」
何でそんなことをいってしまったんだろう。
でも僕にとって、彼とトイレの関係は最大の関心事だったからね。
とっさに、そんなことを聞いてしまったんだよ。

すると彼の顔がますます怖くなってね。
すごい形相で、僕に迫ってきたんだ。
「一体、何を知っているんだ?」
ってね……。
彼には何か、重大な秘密があるに違いない。
僕は、そう思ったね。

それで、その日はうまくごまかして別れ、次の日も尾行をはじめたんだ。
休み時間の尾行はやめたよ。
窓からのぞくと、どうやら目立つらしいからね。
授業中の尾行も、当然できなかった。

一日中張り込んでいないと、正確なことはわからないといっても、自分の授業はやっぱり抜けだせないからね。
僕は、放課後のみ彼のあとをつけまわしたんだ。
そうして、一週間ぐらいたった時かな。
僕は、ついに見てしまったんだよ。
彼の、恐ろしい秘密をね。

その日の放課後、竹内さんは旧校舎に向かって歩いていた。
僕は、旧校舎になんて入りたくなかったよ。
でも、彼の不審な行動が気になってね、あとをつけていったんだ。

旧校舎は嫌だよね。
床がぎしぎしいうから、尾行が大変だったよ。
僕は、彼からなるべく離れてあとを追っていた。
幸い、彼は旧校舎の中をあまり歩きまわらなかったから、尾行時間は少なくてすんだよ。
彼はね、旧校舎に入ると、まっすぐトイレに向かっていったんだ。

なぜ彼が、旧校舎のトイレに?
彼は、トイレに行かない男ではなかったのか?
謎はふかまるばかりだった。
僕は、トイレ入口のドアを少し開け、中を覗いてみた。

すると、竹内さんがトイレの個室に入っていくのが見えたんだ。
なんだ、竹内さんだってトイレにいくんじゃないか。
彼は、いつも旧校舎のトイレを使用していたんだろうか。
だからみんなは、彼がトイレにいくのを見たことがなかったのかな、なんて思ったよ。

でもなんで、旧校舎のトイレを使うんだ?
そのころも、旧校舎は立入禁止になっていたんだよ。
僕がそんなことを考えていると、竹内さんが個室から出てきた。
その時、個室のドアの隙間から見えたのは……。

植物だった。
いや、植物っていっていいんだろうか。
旧校舎のトイレは汲み取り式だろう?
便器から、男の顔がついた大きな植物が生えていたんだよ。

そいつは全身緑色でね、ところどころに赤いまだらの斑点がついていたんだ。
本体には横縞のしわが何本もできていて、ぶよぶよとした感じだったな。
そいつの根っこは、便器の外にまで出ていたよ。
太い二本の根っこに、細い根っこが何本も生えていた。

それが、人間の足のような形をしているんだよ。
それから、顔の下に腕のような形の枝が生えていたんだ。
そして、その植物は……。

竹内さんと、同じ顔をしていたのさ。
竹内さんは、トイレであの植物を育てていたのか?
これが、彼の秘密なんだろうか?

竹内さんの顔をした植物は、しゅるしゅると便器の中にひっこんでいった。
そいつはとても、しなやかに動いていたよ。
僕は、急いでその場を逃げ出した。
見てはいけないものを見てしまった。
そう思って、心臓が破裂しそうだったよ。

僕は旧校舎の廊下を、一気に出口まで走りぬけた。
すごく、息が苦しかったよ。
でも僕は逃げれたんだ。
裏庭の脇を走り、新校舎の近くまで来ると、下校する生徒がちらほらと見えた。
ここまでくれば、大丈夫。

……と、その時だよ。
安心したら、何だかトイレにいきたくなってしまったんだ。
僕は、どうしたと思う?
1.新校舎のトイレに入った
2.さっきの旧校舎のトイレにいった