学校であった怖い話
>三話目(細田友晴)
>O3

違う違う。
君は、わかってないね。
確かに、校門はみんながよく通るけど……。
僕は、トイレの方が出入りが多いと思うよ。
だって、女の子なんか友達同士でよくトイレにいくだろ?

それこそ、一日に何回もさ。
男だって、学校に何時間もいれば、何回かはトイレを使うしね。
やっぱり、トイレだよ。

君だって、必ず行くだろ?
学校のトイレには誰だって世話になるもんさ。
でもね、僕の知っている限り、たった一人だけ学校のトイレを使わなかった人がいるんだよ。
便秘とか、何か不思議な病気にかかっていたわけじゃない。
とにかく、何があろうとも絶対にトイレに行かないんだ。

ようするに、排泄しないんだよ。
そんな人間がいるなんて、信じられるかい?
それがいるんだよね。
その人の名前は、竹内清さんていってね。
僕が一年のときに三年だったから二つ年上だよね。

それでさ、トイレに一度も行かないなんて聞いたら、どんなデブだろうとか思わないか?
それがさあ、ガリガリにやせてる人だったんだよね。
まるで針金みたいにさ。

僕が学校に入ったときには、彼はもう伝説の男として一部じゃ有名だったんだ。
トイレに行かない男としてね。
取り分け、女子の注目たるやすごいものだった。

そりゃそうだよね。
女性には、トイレに行かなくてすんだら、どんなに素敵だろうって考えるロマンチストが多いんじゃないのかな。

必ず、竹内さんの秘密を突き止めてやろうとする女生徒たちが、目をギラギラ光らせていつも付け狙っていた。
知らない人が見たら、なんてモテる男だろうと思っただろうね。

まじめに、テレビ局の取材の申し入れまであったらしいよ。
竹内さんは、かたくなに断ったらしいけれど。
それでもさ、絶対に排泄をしない人間なんて信じられないだろ?
1.信じられる
2.信じられない
3.もしかしたらいるかもしれない