学校であった怖い話
>四話目(新堂誠)
>P2

やめたくても、やめられない……ってとこか。
しょうがねえな。

でもまあ、ずいぶんと寂しくなったもんだ。
最初いた六人が、三人になったんだからな。
それに依然として、話をするはずの最後の一人は来ないし。
まあ、そんなことはどうでもいいか。
いまさら、じたばたしたって始まらないしな。

それじゃあ、自己紹介をしとこうか。
俺の名前は新堂誠。
三年だ。
よろしくな。
うちの学校には、全国大会でも常連になるような運動部がゴロゴロあるのは知ってるだろ?

野球部にサッカー部。
柔道部に剣道部。
テニス部に卓球部。
まあ、人材が豊富だからな。
それだけ、選手層も厚いってことさ。

それでな、そういった運動部の中でも、今あげたものに劣らないほどの数々の輝かしい記録を打ち立てた運動部があったんだぜ。
もっとも、今ではすっかり寂れちまったけどな。
どこだかわかるか?

……ボクシング部なんだよ。
ボクシングはいいぜ。
あれは、男のスポーツだ。
女には、ちょっと理解できないスポーツだよな。
ボクシングをわかっていない奴は、あれはただの殴り合いだのケンカだの言うけれど、とんでもない。

あれほど紳士的なスポーツは、ほかを探してもちょっと見つからないんじゃないか?
うちの学校のボクシング部も、昔はすごかったんだよ。
全国大会には必ずといっていいほど顔を出していたしな。
しかも、いくつもの階級で上位に食い込んでいたんだぜ。
すごいだろ?

でもな、今はだめだ。
全然だめだ。
部員もすっかり減っちまったしな。
昔の面影は少しも残ってない。
とりあえず、過去の栄光にすがりついて、お情けで残っているだけの幽霊クラブになっちまった。

でもな、それには、ちょっとしたわけがあるんだよ。
俺が話す怖い話は、そのボクシング部の話さ。
ボクシング部だって、ただ強くなったわけじゃない。
それに、素質のある奴ばかりが集まってくるわけじゃないしな。

スポーツは、素質よりも根性さ。
その根性を鍛え上げることによってボクシング部は強くなっていったのさ。
しごきってやつだ。
いじめじゃないぜ。
しごきだからな。

うちのボクシング部には、代々伝わってきた伝統的なしごきがあってな。
お前、どんなしごきだったか知ってるか?
1.うさぎ跳び千回
2.神社までのランニング
3.OBの猛特訓
4.地獄の合宿