学校であった怖い話
>四話目(細田友晴)
>A3

「そうかい!? やっぱり、君には霊感があるんだね! 僕が思っていた通りだ。じゃあさっそく、中に入ってみようか? 先輩達は、申し訳ないんですが廊下で待っていてもらえませんか」
みんなは、少しざわめいた。

続けて、細田さんがいった。
「やっぱり、二人っきりのほうがお互いなにかを感じやすいと思うんです」

その時、誰かが口を開いた。
「じゃあ、わざわざ一緒に来ることはなかったと思う」
「いえ、もしもなにか起きたときに助けてもらおうと思っていたんです。みなさん! ご協力お願いします」

細田さんは、みんなに頭を下げた。
みんなは、しぶしぶと廊下に出ていった。
「さあ、坂上君、どのトイレから霊気を感じるんだい?」
霊気を感じるなんて、間違ってもいうんじゃなかった。
ただ何となく、そんな気がしていってみただけなんだけど……。
今、僕はとても後悔している……。

細田さんて、はっきりいって太っているんだ。
そんな彼と、こんな密室に入ったら僕はどうすればいいんだ。
それに、細田さんて女っぽいところがあるからなぁ。
手でも握られたらどうしよう……。
まあ、考えすぎだよな、ははは。

「何を笑っているんですか? さあ入りましょう」
新校舎の一階北側の男子トイレは個室が二個しかない。
ぱっと見ると、個室が三個に見えるのだが、一番右はじが、掃除用具入れになっている。

取りあえず、その真ん中にはいることにした。
まず、細田さんがドアを開けた。
ムッとした、アンモニアの匂いが漂う。
「どうぞ、先に入って……」

うながされるまま僕は中に入った。
そして彼は、僕を押し込むようにして中に入ってきた。
うう、密着する……最低な気分だ。
僕は、太っている人が嫌いだ。
細田さんも、僕の抱いているイメージと同じものを持っている。

なにかこう、脂肪が不完全燃焼しているようなすえた匂いがするのだ。
トイレの匂いと混ざりあって、なんともいえない匂いを作り出している。
そして彼は、僕にささやいた。
「ほーら、坂上君、もっと霊を感じてごらん」

今、感じるのは細田さんの圧迫感だけだ。
「ううーん、霊を感じます! うっ、すいません気分が悪くなってきました! 早く出ましょう!」
ここから、僕が逃れる方法はこれしかない!

「細田さん、僕はここから早く出たいんです。
頼みますよ、もう出ましょう……」
細田さんを押し出して、転がるように廊下に出た。

誰かが心配そうに僕を見ている。
「坂上君、どうしたんだ!? なにかあったのかい!? 汗びっしょりだ。顔色も悪いな……」
どうせなら、女の子と一緒にトイレの個室に入りたかった……。
「今、坂上君が霊を感じて気分が悪くなったんだよ」
細田さんがいう。

ほんとは、細田さんのせいなのに……。
ここはひとつ、僕がガマンせねば。
「僕なら平気ですから……、さあ早く次に行きましょう」
さあ、これもいい新聞部員になるための修行だと思って気を取り直さないと……。
細田さんは、はりきっているようだ。

えーっ、ここは新校舎の一階の南側にあるトイレだよ。
どう?
また、なにか感じるかい?
1.感じる
2.感じない


◆一〜三話目の中で福沢の話を聞いている場合
1.感じる