学校であった怖い話
>五話目(細田友晴)
>N3

へえ、嫌いなんだ。
え、でも魚は食べるのは好きだって?
あ、そう、わかったよ。
観賞用は嫌いだけど、食用としては好きだってことだね。
現実的なんだね、坂上君てさ。

話は元に戻るけどね、彼は生き物が嫌いでさ。
捨て猫を川に流したり、犬に石を投げたりと、まあガキのするようなことを高校生にもなって平気でやっていたんだよね。
そう、それでその池の魚たちも彼の被害にあっていたわけさ。

彼は、池から一匹ずつ魚を取り出しては棒でつついて内臓を出したり、火であぶって猫にあげたりひどいことをしていたよ。
彼には、それが楽しくて仕方がなかったようなんだよ。

中庭の池って、広くて深いから結構たくさんの生き物がいたらしくて、彼が取っていっても誰も気がつかなかったよ。
そう、その魚たちをいじめていた場所があの体育館脇のトイレだったんだ。

殺した魚は、大きくなければトイレにそのまま流してしまえるし、結構彼にとっては便利だったんだね。
なんだか、そのトイレは魚たちの拷問場のようだった。
さすがに、見かねた友達が注意したんだけど、そんな言葉に彼は耳を貸さなかった。

そして、彼はより残酷な殺し方を研究し始めたんだ。
虫ピンを両目に突き刺してみるとか、体中にピンを刺して、
「お前は、はりせんぼんだよ」
なんていっていた。

漂白剤に金魚をつけこんでみるとか。
ある時は、亀を捕まえてきて手足をこうらの中に押し込め針金でぐるぐる巻きにして、下から火であぶったんだ。

亀はもがこうとしたけれど、針金のせいで手足が出ない。
火は、だんだんこうらを焦がしてくる。
きゅーーーと叫ぶような声がした後は、もう亀はもがくこともなかった。

「もっと、苦しむんだ! もっともがけ!」
彼は叫んだ。
魚たちに恨みがあるかのようにね。
無力な魚たちは、小さな抵抗を試みてはすぐ死んでいった。

そして、ある時からトイレで変な匂いが漂うようになったんだ。
トイレ独特のアンモニア臭じゃなくて、もっと腐ったような焦げたような匂いがね。

放置した、魚の死体からの匂いだと思うだろう?
彼は、ちゃんと魚の死体を始末していたからそのせいじゃない。
それは、女子トイレも男子トイレも同じ匂いがしたんだよ。

普通の人だったら、もうトイレに入れないほどね。
そんなこともあって、あのトイレはめっきりと使用者が減っていったんだよ。
先生も、そのうわさを聞いて何回か調べたんだけど、なにも匂いの原因になるようなものはなかった。
彼は、その臭い匂いが好きだった。

もっと、自分の気持ちを残酷にしてくれる気がしたから……。
そして、相変わらず彼の魚たちに対する拷問は続いた。
最初は小さな魚だけで、満足していたんだけどだんだん大きな魚をいじめたいという気持ちが出てきたんだよ。
そして、彼はある決心をしたんだ。

そう、あの池のぬしと呼ばれる錦鯉を捕まえることにしたんだ。
彼は、その計画を今度の日曜日の夕方に決行することにした。
その鯉は人に慣れているので、捕まえることは簡単だった。
だけど、あまりにも大きかったので網に入れて引き上げてからひもでくくってかついでいったよ。

そして、例のトイレに連れていったのさ。
トイレの中でぴちぴち跳ねる鯉は、彼にいじめてくださいと言っているように見えた。
彼は、どうやって鯉をいじめたと思う?
1.鱗をはがして塩漬け
2.鯉をさばいて活け造りの刑