学校であった怖い話
>五話目(細田友晴)
>U7

僕は先生に必死に頼み込んだよ。
頭が痛いだの、お腹が痛いだのいって、保健室に逃げたんだ。
先生は不機嫌そうだったけれど、許してくれた。
とにかく、津田君と二人きりにはなりたくなかったからね。
でも、それが間違いだったんだ。

保健室には誰もいなくてね。
僕は、一人で寝ていたよ。
そしたら、しばらくしてドアのほうで物音がしたんだ。
保険の先生が戻ってきたのかと思って、目をやると……。
津田君が立っていた。
例の餌を見るような目付きでね。

僕は、思わず呟いてしまった。
「……津田君」
津田君は、笑っていた。
獲物を追い詰めたような笑いだった。
「……細田君、ひどいじゃないか。
君、僕のことを嫌っているのかい?
ここ数日、そんな気がするんだけど」

そして、ゆっくりとベッドに近づいてきたんだ。
僕は、動けなかった。
金縛りだよ。
あまりの恐怖に金縛りにあってしまったんだ。
まるで、クモの巣にかかった虫さ。
それが、津田君にもわかっているようだった。

あせりもせず、ゆっくりとゆっくりと近づいてくるんだ。
「……細田君、太っていておいしそうだねえ。
どんなものを食べたら、そんなになれるんだい?」
そういいながら、突然僕のベッドの上に乗ってきたんだ。

僕の上にまたがって、嬉しそうによだれをたらすんだ。
僕はもう、泣きたかったよ。
そして、これが最期なんだと実感した。
津田君の口には、牙が生えていた。

そして、大きく開けた口は、糸を引いていたんだ。
よだれじゃなくて、本物の糸さ。
まるで、クモだった。
食われてしまう!
……そう思ったとき、少しだけ身体が動いたんだ。

まさに、天の助けだった。
僕は、何とか少しだけ身体をよじらせた。
「ぎゃっ!」
突然のことだった。

別に僕は身体をよじらせただけなのに、いきなり津田君が苦しみ始めたのさ。
ベッドから転げ落ち、頭を抱え足をばたばたと漕いでいた。
僕は金縛りが解けてね。
思わず、上にかかっていた毛布をはねのけた。
すると……。

僕の身体の下で、一匹の女郎グモが押し潰されていたのさ。
腹が潰れ、中からどろっとした液体がこぼれてたよ。
そして、津田君はそのまま動かなくなった。

僕は、逃げたよ。
津田君のことを放ってね。
教室に戻ると、まだ授業中だった。
先生は、僕が真っ青な顔をしてるんで、驚いていたよ。
そして、そのまま僕は倒れた。

気がついたら病院のベッドだった。
僕は、助かったんだ。
そして、全身で生きてる喜びをかみしめたのさ。
「細田君」
突然、誰かが僕を呼ぶ声がするんだ。
不思議に思って声のするほうを振り向くと……。

津田君だった。
津田君が、僕の隣で寝ていたんだ。
その時のショックったら、とても言葉じゃ言い表せないよ。
本当に心臓が止まりそうだったもの。

その時、僕はどうしたと思う?
1.津田君と戦う
2.じっとする
3.看護婦さんに助けを求める