学校であった怖い話
>五話目(岩下明美)
>X9

そう。
それで、確かめるために、彼女は伊達君の家に電話をしてみたわ。
今度は、電話は通じた。
何度かの呼び出し音のあと、一人の女性が出たわ。

「……もしもし」
「あのう、伊達さんのお宅ですか?
夜分遅く申しわけありませんが、そちらに守さんいらっしゃいますでしょうか」

「……守なら、さっき出ていきましたよ。何でも、友達に貸したノートを取りに行かなきゃならないとかで」
「あ、そうですか。どうもすいませんでした」

電話に出たのは、彼女のお母さんだった。
でもそれで、少しほっとしたの。
とりあえず、伊達君は家にいない。
ノートを取りに行くというのは、口実だろう。
きっと今、彼は学校の裏門で待っているに違いない。
そう思うと、急がずにはいられなかった。

彼女は、そっと家を抜け出すと、急いで学校に向かったの。

急いで行ったけれど、裏門には人の姿は見えなかった。
時計を見ると、もう十一時を回っていたわ。
「やっぱり、帰っちゃったのかな……。公衆電話には誰もいないし」

辺りは不気味なほど静まり返っていたわ。
夜中の学校ですものね。
人通りもないし、誰かが隠れている様子もないし。
きっと、帰ってしまったんだ。

矢口さんが、あきらめて帰ろうとしたとき。
突然、電話のベルが鳴ったの。
その音は、鳴るはずもない公衆電話の音だったわ。
誰がかけているのか。
何だか、ベルは彼女のために鳴っているようだった。

どうする?
こんなとき、あなただったら受話器を取ってみるかしら?
1.取る
2.取らない
3.もう少し様子を見る