学校であった怖い話
>五話目(岩下明美)
>AE3

…どちらともいえない、ですって?
おかしなことをいうのね。
恋人のこと愛しているから、つき合っているんじゃないの?
愛していれば、美しく思えるものじゃないかしら。

それとも、そんなに好きでもない人と、ただなんとなく、つき合っているの?
それとも…………。
わかったわ、うふふ。
あなた、恋人なんていないんでしょう。

高校生にもなって、恋人がいないなんて恥ずかしくて、本当のことがいえなかったのね。
その気持ち、わかるわ。
でも、嘘は駄目。
私は嘘が嫌いなの。
だけど、それ以上に、こういう嘘をついてはいけない理由があるの。
今日は、その話をしてあげるわね。

……彼は、この学校の生徒だったわ。
名前は……そうね、東山くんとでもいっておこうかしら。
彼にも恋人はいなかった。
決して、もてないタイプではなかったのよ。

アイドル並みとまではいかなくても、まあまあのルックスだったし。
……だからこそ、恋人がいるなんてフリをしてしまったのね。
自分に恋人がいないなんて、格好悪くていえなかったのよ。

友達に聞かれるたびに、彼は適当にでっち上げた恋人のことを話していたわ。
ショートカットが似合う、目がくりくりっとしたかわいいタイプだなんてね。

ある日のことよ。
こりもせず、架空の恋人の話をする東山君に友達がいったの。
「彼女の写真を見せてほしい」ってね。
そんなことできるわけないでしょ。

断ろうとした東山君のポケットから、生徒手帳が落ちたの。
手帳にはさんであった、一枚の写真もね。
この学校の生徒じゃない、かわいい女の子の写真だったわ。
友達は、東山君の彼女だと思い込んだ。
でも、東山君は覚えがなかったの。

誰の写真かも、いつの間にポケットに入っていたのかさえも。
不思議なことはまだ続いたわ。

その日の放課後、正門の前に一人の女の子が立っていたの。
東山君は驚いたわ。
だって、写真に写ってる女の子だったんだもの。

あわてて駆けつけると、彼女はにっこり微笑むじゃない。
「遅い。今日は東山君のオゴリだからね」
そういって、東山君の腕を取ったの。

東山君は驚いたわ。
でも、悪い気はしなかった。
かわいい女の子だったし、一目ぼれされて、一芝居打たれているんじゃないかと思ったのね。

だから、素直に彼女についていった。
彼女は、どこに行ったと思う?
1.東山君の家
2.近所の公園