学校であった怖い話
>五話目(福沢玲子)
>A2

泳げるんだ。
そうよね。
高校生にもなって泳げないなんて恥ずかしいもんね。
私もさ、彼氏にするんだったら、泳げる人がいいな。

何でかって?
決まってるじゃん。
一緒に海に行っても、つまんないでしょ。
それに、もし私がおぼれちゃったら誰に助けてもらうわけ?
それにさ、絶対に海外旅行とか行きたいし。
南の島のリゾートに、彼氏と二人っきりで過ごしたいもん。

だから、泳げなきゃイヤ。
……あ、ごめんね。
話がそれちゃったね。
水泳部の話だったね。

実はね、私のお姉さんて、この学校の先輩なんだ。
七つ年上。
それで、女子水泳部だったの。
男子と女子はわかれてるからね。
だから私この話を知ってるんだよ。
お姉さんがいたことね、ものすごい選手がいたんだってさ。

彼女が泳ぐと、お魚みたいだって、みんなは噂したんだって。
それほど泳ぎが得意だったわけ。
彼女が泳ぐとね、水が嬉しそうに波打つんだってさ。
みんな、見惚れたんだって。

本当に水が喜んでるわけじゃないよ。
ただね、そう見えてもおかしくないほど、彼女の泳ぎは華麗だったのよ。

彼女の名前は、瀬戸裕子さんていったの。
瀬戸さんはね、お魚の生まれ変わりだっていってもみんな信じたよ。

そんな瀬戸さんだったけどね、事故で死んじゃったの。
ある日、泳いでいるときに心臓マヒを起こしちゃってね。
みんな驚いて助けに行ったときは、もう手遅れだったの。

怖いでしょ?
猿も木から落ちるっていうけど、まさか瀬戸さんが水死するなんて誰も思っていなかった。
だから、彼女が死んだなんて、誰も信じられなかったの。

それからなのよね。
変なことが起きるようになったのは。

ねえねえ、どんな変なことが起きたと思う?
1.誰もいないプールで、誰かが泳いでいる音がする
2.誰もいない部室が、水でびしょびしょになっている
3.泳いでいるとき、足をつる人が多くなった