学校であった怖い話
>五話目(福沢玲子)
>L8

僕は、ごくりとツバを飲み込むと、ロッカーに手をかけた。
そして、ゆっくりとドアを開けてみた。
金属のさびた鈍い音がする。
ロッカーのドアって、こんなに重いものだっただろうか……。

ロッカーのドアが開いた。
……中には…………何もなかった。
ロッカーの中は、きれいに片付けられており、空っぽだった。
……中から、ぷ〜んと鉄の臭いがした。
鉄の臭い。
それは血の臭いともいえる。

けれど、ロッカーの内側は、角が少しハゲているだけで、血の跡など一つもなかった。
……やっぱり、鉄の臭いなんだろうか。

後ろから肩をたたかれ、僕はビクッと身体を震わせた。
振り返ると、そこに、最後の一人がいた。
「とうとう、僕たち二人だけになってしまったね」
最後の一人は、何だか笑っているように見えた。
僕は、黙って頷いた。

彼は、何かをいいたそうだったけれど、言い難そうに口をもぐもぐさせている。
決心が固まったのか、下を向くと上目遣いに僕に問いかけた。
「……どうするの? まだ続けるのかい?」

どうする?
話をした人間は、次から次へといなくなってしまう。
これはもう、偶然と呼べるんだろうか。
このまま話を続けたら、最後に残った彼までいなくなってしまうだろう。

そして、最後に取り残された僕は、どうなるんだろう……。
このまま続けてもいいのだろうか?
それとも、まだ僕の命があるうちにやめるべきなんだろうか。
1.続ける
2.やめる