学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>F15

行かねばならない。
なぜか僕は、使命感に燃えていた。
あの女子トイレは、間違いなく僕のことを誘っているのだ。

「行きましょう」
僕がそういうと、細田さんが僕の手を握っていた。
「……君は、勇気があるね。僕は、怖いよ。
自分で行こうなんていっておきながら、こんなことをいうのは何だけれど……。僕は、怖くてたまらないんだ」

「大丈夫ですよ」
とはいったものの、保証なんか何もない。
僕のいった言葉の、何と説得力のないことか。

「今まで、話をしてきた人たちが、みんないなくなってしまう。一つ話が終わるたびに、悪いことが起きる。
……今度は僕の番だろ? 僕がいなくなってしまうんだろ?」
細田さんの手は、じっとりと汗ばんでいた。

そして、顔中から汗が吹き出して、ぬらぬら光っていた。
「頼むよ。僕のことを見捨てないでおくれよ」
「わかってますよ」
僕が足を進めると、僕の手を握る細田さんの手に力が入るのがよくわかった。

僕たちは、女子トイレの前に立った。
「……入りますよ」
僕の言葉に、細田さんは小さく頷いた。

トイレの中には何もなかった。
しばらく使っていないせいか、何ともいえない饐えた臭いが辺りを包んでいる。
……奥から二番目のトイレ。
噂では、そこに花子さんがいるという。
でも、ほかも怪しい。

とりあえず、僕は奥から二番目のトイレの前に立った。
どうする?
ノックしてみるか?
1.ノックする
2.ノックしない