学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>R11

そうなんだ。
彼らも、教室の中を調べることにしたよ。
廊下を歩き続けても、しょうがないからね。

まず、当然だけど窓を調べた。
蒸し暑い日だったから、少しでも風が入るように窓は開けてあったんだ。
でも、それがいつの間にか閉まっている。
三人は何もいわず、窓を開けようとした。

誰が閉めたか……なんて考え出したら、どんどん怖いことを想像してしまうからね。
でも、窓は開かないんだ。
さびついてるみたいにね。
馬鹿げているだろう?
さっきまで開いていた窓なのにさ。

何度か試しているうちに、限界に達したんだろうね。
「帰る! 私帰るわっ!!」
わめいたのは、泣いていた女の子じゃなく、なぐさめていた子の方だった。
彼女はカバンをひっつかみ、教室を飛び出したんだ。

「あっ、待てよ!」
追いかけようとしたけど、そうすると一人きりで残される彼女がかわいそうだ。
彼は踏みとどまった。
そしてそれは、正しい選択だったんだ。
だって、その数秒後。

校舎中に響くような悲鳴が聞こえた。
同時に、バキバキと何かが砕ける音も。

ドアのところまで行ってみた二人は、明かりの消えた廊下で、何かが這いずっているのを見たんだ。
なんだろう?

そう思って目を凝らすと、それは少しだけ、こっちに前進した。
それは、駆け去った彼女だったよ。
うつ伏せのままで必死に顔を上げ手を伸ばしている。
「たすけ……て……」
かすれ声が助けを求めた。

その次の瞬間、彼女が闇に引き込まれた。
暗闇に何者かが潜んでいて、彼女を引っ張ったみたいだった。
ゴキゴキッ……鈍くて嫌な音がした。
そして二人の足元に、大きなかたまりが放り込まれたんだ。

とっさに避けると、それは学生カバンをしっかりと握りしめた腕だったよ。
「きゃーーーーっ!!」
女の子が悲鳴をあげた。

それを聞いて、廊下の闇がふくらんだ。
闇自体が生きているんだ。
そう気づいた彼は、女の子を引きずってドアを閉めた。

こうすれば闇が入って来れないとでもいうようにね。
だけど、そのとき彼は見たんだ。

窓の外に広がる、無限の闇を。
その闇が、自分たちめがけて押し寄せてきているのを。
窓ガラスがミシミシと鳴っていた。
すぐにでも窓が割れる。
そうなったらもう、自分たちには助かる方法はない。

……それならば。
彼の頭に、一つの案が浮かんだんだ。
それは、どんなことだったと思う?
1.女の子を犠牲にして、自分は逃げる
2.自分を犠牲にして、女の子を逃がす