学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>AU4

そうかい。
君って案外、意気地がないんだね。
それならいいよ。
僕一人でも行くさ。

さっさと、古びた扉から出ていこうとする。
僕はあわてた。
呼び止めようとしたとき、不意に細田さんが振り向いた。
「本当に行ってしまうよ。いいのかい」
一人で残されるなんて、嫌です!
僕もいっしょに行きます。

…………そういったつもりだった。
でも、舌が動かない。
誰かに押さえつけられているみたいだ。
「……そうか。君も強情だね」
細田さんは、ため息をついた。

違います!
いっしょに行きたいんですってば!!
……でも、声は出ない。
それどころか、立ち上がろうとしても、体さえ動かない!
背筋を、冷たい汗がすべり落ちた。

僕の体は、どうなってしまったんだ!?
たぶんこのとき、僕の顔色は、真っ青だったはずだ。
けれど、細田さんは僕に背を向けた。
「気が向いたら、追いかけてきてくれていいからね」

その言葉を残し、ドアがぴしゃりと閉まる。
僕は、たった一人で取り残された。
僕の異変に、気づかなかったんだろうか。
ふてくされて答えない、生意気な下級生だとでも?
鈍感な細田さんに、腹が立った。
でも、今はそれどころじゃない。

僕は深呼吸した。
落ち着かなければ。
今日はいろんなことがあった。
緊張のしすぎで、金縛りにあっているのかもしれない。
何かで読んだことがある。

十代のあいだに起きる金縛りは、五十パーセント以上が霊なんかに関係ないって。
体が疲れていたり、ストレスを感じているとなることが多いって。
きっとそれだ。
そうに違いない。
僕はもう一度、深呼吸をした。
そのときだった。

カツーン……カツーン……という足音が聞こえた。
こっちにやってくる。
誰だ?
細田さんが、戻ってきてくれたんだろうか?
1.細田さんではない
2.細田さんに間違いない