学校であった怖い話
>六話目(福沢玲子)
>O8

先生は、思わず平井さんを抱きしめたわ。
「平井! すまなかった!! 俺のせいでこんなことに……」
すると平井さんは、こんなことをいったの。
「いいのよ、先生。
二人は赤い糸で結ばれているのよね。

謝るより、愛を見せて。
ね、見せてよ。
先生の、赤い糸を……」
そして平井さんは、落ちたナイフを拾ったのよ。
「う……うわあああっ!!」
近藤先生は驚いて逃げ出したわ。

もう、学校のことなんかすっかり忘れちゃって。
そのまま職員室にも戻らずに、家まで逃げ帰っちゃったの。

でもね、アパートに帰って改めて気づいたの。
このアパートの場所、平井さんが知っていることを。
そう思った矢先だったわ。

ドアをノックする音が聞こえたの。
近藤先生、怖くって耳をふさいだわ。
それでも、聞こえてくるの。
耳をふさぐ手の隙間をぬって、平井さんの声が忍び込んでくるの。

「……ねえ、近藤先生。どうして、逃げてしまったの? 二人は、赤い糸で結ばれているのよ」
「違う! そんなことはない!」
近藤先生、無理に大声を出して平井さんの言葉を打ち消そうとしたの。
でも、平井さんの声は、直接、頭の中に響いてくるようだったの。

「……先生。約束、覚えてる? 指切りの約束」
近藤先生の頭の中に、あのときのことが思いだされたわ。
平井さんと指切りの約束をしたことがね。

「……ねえ、先生? 覚えてるでしょ? 二人の約束。私が高校を卒業したら、結婚してくれるって約束。ねえ、先生、覚えてるでしょ?」
平井さんの声は、やまなかった。
そして、ドアをたたく音も。

その時、近藤先生はなんて答えたと思う?
1.覚えてる
2.忘れた
3.帰ってくれ
4.許してくれ!