学校であった怖い話
>七話目(荒井昭二)
>A4

「ああ、そうだね」
「よかった!」
彼女は、嬉しそうに僕に近づいてきた。

二人肩を並べて、誰もいなくなった新校舎の廊下を歩く。
「もう八時過ぎなんだね」
福沢さんが、側の教室を覗き込み壁にかかった時計を見て驚いた。
そうか、もうそんな時間になっていたのか。
僕が部室にきたときには今にも雨が降りそうな天気だったけれど、どうやら持ちこたえたようだ。

「ずいぶん遅くまでいたんだなあ」
「そうだね」
それきり、話が進まなかった。
僕は、何を話していいのかわからず会話を捜していた。
明るそうな福沢さんなら、何か話題を見つけてくれんじゃないかという期待をかけたのだけれど、それはちょっと虫のよい願いだったかもしれない。

それにしても、福沢さんがいて、僕自身助かった。
あれだけ怖い話を聞かされたあとで、一人で学校から帰る勇気は、僕にはちょっと足りないと思う。
自然と早足になり、ふだんより長く感じる廊下を歩いていく。

廊下に響く足音しか音が聞こえてこないため、それがやけに大きく聞こえ、まるで何人もが後ろからついてきてるような錯覚さえする。
すべては、荒井さんに植えつけられた恐怖心によるものだろうか。

……おや?
何だろう?
廊下の向こうに人影が見える。
何だか、こっちに向かって、おいでおいでをしているように見えるけれど……。

どうする?
向こうに行かないほうがいいんじゃないのか?
1.このまままっすぐ進む
2.後戻りして別の道を行く