学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>I7

今考えれば、馬鹿なことをしたものさ。
初めは、ちょっとしたいい争いだったんだ。
先生と友達で、どっちが足が速いか、という話になってな。
それで、競走することになった。
ただ、それが雨の日だったんだ。

だから、校舎の中で競走しようということになってな。
もちろん、先生に知られたら怒られるから、放課後こっそりとだ。
そのコースに、例の壁の前が入っていたんだよ。

まずいと思った。
でも、文句をつければ、怖じ気づいたといわれそうだ。
もちろん、今更引くわけには、絶対にいかない。
先生はしょうがなく、嫌でたまらなかった壁を見ることになったのさ。

仲間の合図で飛び出して、ほぼ同時に角をまがった。
いや、少し先生の方がリードしていたかもしれない。
そして壁の前を通りかかったんだ。
すると突然、誰かに肩をつかまれたような気がした。

振り向くと、女の子が立っていた。
そう、セーラー服を着ていたし、たぶん女の子だと思う。
何で、そんないいかたをするかって?
セーラー服の上には、何もなかったからだ。

首があるはずの場所は、ポッカリと空間が開いていたんだよ。
「私は首をなくしてしまった」
そう、彼女はいった。
「だから、あなたの首をちょうだい」
とな。

そして気がつくと、先生の周りには、たくさんの亡霊がいたのさ。
「私にもちょうだい」
「俺達におまえの体をくれよ」
口々に、そんなことをいいながら、血まみれの体が近づいてくる。
先生は、たまらず気絶してしまった。

勝負には、もちろん負けてしまったよ。
でももう、そんなことはどうでもよかったんだ。
命が助かっただけでも、もうけものだと思ったからね。

……さ、先生の話はこれで終わりだ。
もう、十分だろ。
みんな、帰ろう。
先生が、校門まで送っていってやるから。

……僕たちは、黒木先生に見送られて、学校をあとにした。
……それにしても、何とかなった。
怪我の功名というやつか。
七人目は来なかったけれど、代わりに黒木先生の怖い話を聞けたから、先生が七人目ってことになるな。

それにしても、もうだいぶ遅いな。
帰り道に、ふと店先の時計を見ると、もうすぐ九時になろうとしていた。
僕は家に帰ると、今日の出来事を思い起こしていた。
……それにしても、ずいぶんと怖い話があるもんだ。

途中で岩下さんが帰ってしまったけれど、無事だろうか。
まさか、彼女の弟が内山君だったなんて……。
もし明日学校であったら、僕はどんな顔をすればいいんだろうか。
一応、僕のほうから謝ったほうがいいんだろうか。

その時。
突然、電話のベルが鳴った。
今頃、誰だろう?
時計を見ると、もう十一時を回っていた。
どうする?
電話に出るか?
1.電話に出る
2.出ないで放っておく