学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>AY9

「……わかりました。今から行きますよ」
ここで断っても、きっと細田さんはしつこく僕を誘うだろう。
仕方なく、僕はそう答えた。
「ありがとう! ありがとう、坂上君! 君なら、絶対にそういってくれると思っていたよ! それじゃあ、今から一時間後に学校の校門で待ってるから。よろしくね!」

「あ、ちょっと待ってく……」
細田さんは、いいたいことだけいい終わると、すぐに電話を切ってしまった。
「……まいったな」
僕はため息をつき、受話器を置いた。

僕も、つくづくお人好しだ。
まさか、こんな時間に学校に呼び出されてそれを受けてしまうとは。
しかも、こんなことがあった日に……。
僕の神経はマヒしていたのだろうか。

普通なら、怖くてたまらないんじゃないのか?
それとも、あれだけ怖い話を聞かされたんで、おかしくなってしまったのか?
僕は、そんなことを考えながら学校に向かった。

時間に遅れたつもりはなかったけれど、すでに細田さんは校門のところで待っていた。
「坂上君!」
細田さんは、僕を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。
肩には大きなバッグを下げていた。
いったい、何が入っているのか。
「さあ、旧校舎へ行こう。そして、あの壁の向こうを確かめるんだよ!」

細田さんの目は、らんらんと輝いていた。
なぜ、そこまでして、そんなことにこだわるのか、僕には理解できない。
僕たちは、旧校舎に向かった。

もう、黒木先生は寝ているのだろうか。
真夜中の旧校舎は、まるで悪魔でも住んでいるような不気味さだ。
細田さんは、用意のいいことに懐中電灯まで持ってきていた。
懐中電灯が薄汚れた壁を照らす。

「……確か、この辺だったけれど。……あった!」
確かに、壁の色が違う。
この辺りだったかもしれない。
「よし」
細田さんは、肩から重そうな大きなバッグを下ろし床に置いた。

床のきしみからして、相当重そうだった。
チャックを開けると、中から金属の固まりが姿を現した。
「細田さん、これ……!」
僕は、思わず叫んでしまった。
細田さんは嬉しそうに微笑むと、その固まりを取り出した。

「うふふ……、僕のお父さんは日曜大工が趣味でね。電動ノコギリを借りてきたんだ」
僕は開いた口がふさがらなかった。
まさか、電動ノコギリで、この壁を切り刻もうというのか?
どうする?
1.止める
2.黙って様子を見る