学校であった怖い話
>七話目(岩下明美)
>H6

俺は、その物体がなんなのかということに、とても興味があった。
俺は岩山にいった。
「ちょっと、触ってみるぜ」
岩山が俺にいう。
「大丈夫なのか? 注意しろよ」
暗闇の中でなにかを触るというのはあまり気分のいいものではない。

それが、得体のしれない物体ならばよけいにそうだ。
しかし、暗闇の中でなにかわからないものを触るというのは、逆に好奇心をそそられるものだ。
俺は、そっちのほうが強かったらしい。
危険なものかもしれないのに、触ってみたくて仕方ない。

そして、俺はゆっくりと、そのものがあるであろう場所に手を伸ばしていった。
「……!」
俺は、声が出そうになった。
そこには、ちゃんとその物体はあった。
暖かい。
人肌の温もりだ。

俺は岩山に声をかけた。
「岩山も、ちょっと触ってみろよ。せっかく来たんだ。少しはお前も体験しろよ。吐きにきただけなんて情けないぜ」
「わかったよ……。うるせえなぁ」
岩山も手探りで、その物体に触ろうとした。

「なんか、気持ちいいな……」
岩山がやっとそれに触れたようだ。
そうなんだ、その物体はとても触り心地がいいんだよ。
それに触っていると、怖いというよりも安心するというか落ちつくというか……。

柔らかくて、中に暖かい液体が入っているようなんだけど、それでいて張りがある表面。
岩山がいった。
「日野……これすっごい気持ちいいよ。俺、ずっとここにいてもいいな」
岩山が、急に馬鹿なこといい出したんだ。

俺はあせっていったよ。
「変なこというなよ。おい、今日はこの辺にして帰らないか?」
「俺、もうこのままこの塊に抱かれていたいんだ。どうなってもいい」
どうもあいつの様子が変なんだよ。
俺は岩山に強くいったよ。

「おいしっかりしろよ!! なに、寝ぼけたこといってるんだ!」
その時、その物体が蛍の光みたいに光り始めたんだ。
最初は、ごくわずかな光でゆっくり光った。
だんだん、光が強くなる。

それは、薄桃色の透明な塊だということがわかった。
俺は言葉を失ったよ。
こともあろうか岩山のやつ、その透明な塊の中に顔を全部突っ込んでいたんだ。
それは、ゼリー菓子の中に閉じこめられた果物のように見えた。

半透明の塊の中でも、岩山はしっかりと目を開いている。
苦しくはないのだろうか?
そして俺を見て、満面に笑みを浮かべているんだ。
その時の顔といったら、すごく不気味でさ。

それから俺はどうしたと思う?
1.岩山を置き去りにして逃げた
2.岩山を助けた