学校であった怖い話
>七話目(岩下明美)
>H7

俺は逃げたんだ。
情けないことに、岩山を見捨ててね……。
全速力で走ったよ。
そこいらじゅうに体をぶつけながらね。
俺はどうすることもできずに、次の日を迎えたんだ。

……岩山は学校へ来なかった。
その次の日も、またその次の日も……。
俺は、罪の意識にさいなまれたよ。
やっぱりあの時、岩山を助けていればよかった……、ってね。

俺は、あれから毎晩夢を見た。
夢の中にも、あいつのあの顔が出てきて俺に笑いかけるんだ。

そして一週間後……。
なんとあの岩山が元気に学校へ登校してきたんだ。
俺は夢を見ているような気分だった。
ふらふらと、俺は岩山に近づいていったんだ。

「よかった、岩山! 無事だったんだ!!」
そういって俺は、岩山に思いっきり抱きつきていたよ。
「気持ちわりいなぁ、抱きつくなよ。
俺は、いたって元気だぜ」

岩山は、ブイサインを出すと笑って見せた。
そしてその放課後、俺は岩山と教室に残ってあの時のことを話したんだ。
まず、あの時、岩山を見捨てて逃げてしまったことを謝ったよ。

彼は笑って、こうやって助かったんだからと、俺のことを快く許してくれた。
そして、どうやってあの倉庫から逃げだしてきたかを語ったんだ。
「いや、あれから急に正気になってさ。急いで、あの変な塊から頭を抜いたんだよ。

気管には、あのゼリー状の塊が入り込んでいて大変だった。せき込んでね。息ができなかったよ。それでもなんとか逃げ出してね。
こうやって助かったわけさ。その後一週間は、ちょっと熱が出て学校を休んじまったけどね」
とにかく、俺は彼が助かったことが嬉しかった。

そして、しばらく世間話に花を咲かせていたんだ。
俺さ、岩山のことで気を病んでただろ?
岩山が生きてたってことで、どっと疲れが出たらしくて、目の前がぶれて見えたんだ。
岩山の顔が、ぼやけるんだよ。
岩山が心配そうにのぞき込んだ。

「どうした?」
岩山は俺の肩に両手を乗せた。
「なんか疲れてさ……」
そして、俺は岩山の顔を見た。
俺は、自分の目を疑ったよ。
あいつの顔が半分透けてるんだ。
後ろの背景が、半透明で透けて見えてるんだよ。

「岩山、お前いったい!?」
俺は、岩山から逃げようとしたが肩をがっちりとつかまれているので身動きが取れない。
さあ、お前ならどうする?
1.戦うしかない
2.逃げるしかない