学校であった怖い話
>七話目(岩下明美)
>N4

そう、お前のいう通りだ。
中は、ホルマリンの臭いでいっぱいだった。
ホルマリンてわかるよな?
あの、動物の標本とかをつけとく溶液のことさ。

まるで、あのビンを部屋中にぶちまけたようなきつい臭いだった。
俺は、一瞬、麻酔を打たれたみたいになってな。
感覚が、ぶっとんじやったよ。

ふらふらになって、視界がぼやけて意識がもうろうとし始めた。
こりゃ、中に長い間いると危ないなと思いながら、電気のスイッチを捜した。

その時だった。
どこからか赤ん坊の泣くような声が聞こえてきたんだよ。
その声は、倉庫の奥のほうから聞こえてくるようだった。
赤ん坊の声と一緒に、水がチャプチャプ揺れるような音も聞こえてきた。

俺はびっくりしたよ。
そして、何事かと思ったよ。
部屋はかなり奥行がありそうだが真っ暗で何も見えない。
いろいろなものがゴチャゴチャあるみたいだったが、わけのわからないものばかりだ。

へたに歩くと、危ないからな。
電気さえつけばはっきりとわかる。
何とか電源を捜そうと必死になった。
その時だ。
俺の後ろで、何かが倒れる音がした。
見ると、岩山が倒れて、つらそうに息を吐いているじゃないか。
「おい、岩山」

「……日野。俺、気持ち悪い。この部屋、臭いぜ。もう、だめ……」
岩山の野郎、あまりホルマリン臭いんで、よっぱらっちまったのさ。

なあ、坂上。
そのあと、俺はどうしたと思う?
1.岩山を放って、電源を捜した
2.岩山を担いで、部屋を出た