学校であった怖い話
>七話目(岩下明美)
>O4

お前ら、死体を燃やした臭いってかいだことあるか?
俺も、直接はないんだけどさ。
俺の母親の田舎のじいさんが聞かせてくれたんだ。
昔は、今みたいにちゃんとした火葬場なんてなかったんだ。

八本の鉄の棒で作られた、四角柱の枠組みだけの質素なものが火葬場として使われていたそうだ。
今でも、その枠組みが残っているところがけっこうあるんだ。
その中央に死体を置いて、木やわらと一緒に燃やしたんだって。
俺もそれを、近くで何回か見たことあるけど、あんまりいいものじゃないよ。

その鉄の枠も、中央の土もどす黒くてね、つい嫌なことを想像してしまった。
なんで、壊さないで残しておくんだろうね。
田舎では『葬礼場』とかいってたっけ。
一つの村には一つくらいあってさ。
それがけっこう民家と近いんだ。

人を燃やすときは、半日以上もかけて焼くそうだけど、またその臭いがすごいんだって。
言葉ではいい表せないほど臭いそうだ。
自分が生活している空気と一緒に、死体を焼く臭いが流れてくるんだぜ。

俺のじいさんもいってた。
あの臭いは何回もかいだけど、慣れることはできなかったって。
俺は思ったよ。
じいさんがいってた死体を焼く臭いって、きっとこんななんだってね。

そう思ったら、胃の中のものがぐっとこみ上げてきた。
でも、俺はそれをのどの奥にだ液と一緒に飲み込んだよ。
飲み込んだとき、その臭いも一緒に飲み込んだ気がして嫌だった。

このまま、長くここにいたら気が変になってしまうかもしれないと思いながらも、電気のスイッチを捜した。

その時だった。
どこからか赤ん坊の泣くような声が聞こえてきたんだよ。
その声は、倉庫の奥のほうから聞こえてくるようだった。
赤ん坊の声と一緒に、水がチャプチャプ揺れるような音も聞こえてきた。

俺はびっくりしたよ。
そして、何事かと思ったよ。
部屋はかなり奥行がありそうだが真っ暗で何も見えない。
いろいろなものがゴチャゴチャあるみたいだったが、わけのわからないものばかりだ。

へたに歩くと、危ないからな。
電気さえつけばはっきりとわかる。
何とか電源を捜そうと必死になった。
その時だ。
俺の後ろで、何かが倒れる音がした。
見ると、岩山が倒れて、つらそうに息を吐いているじゃないか。
「おい、岩山」

「……日野。俺、気持ち悪い。この部屋、臭いぜ。もう、だめ……」
岩山の野郎、この臭いにがまんできなくなったんだな。
俺はいったよ。
「情けないぜ、岩山。これくらいでダウンか?
きっと、こういうのが死体を焼いたような臭いっていうんだな。そう思わないか?」

岩山に聞いたって、返事はうなり声だけだよ。
そういう俺も、限界寸前だったんだけどな。
なあ、坂上。
そのあと、俺はどうしたと思う?
1.岩山を放って、電源を捜した
2.岩山を担いで、部屋を出た