学校であった怖い話
>五話目(荒井昭二)
>I6

僕は、荒井さんの胸に耳を当ててみた。
ゼイゼイいっている。
やっぱり生き返ったんだろうか?
そう思った次の瞬間、そんなことあり得ないのに気がついた。
さっき見たとき、確かに荒井さんは死んでいた。

しかも、この音。
呼吸の音だったら、胸から聞こえるはずがないじゃないか!
この音は、いったいなんだ!?
僕たちは顔を見合わせた。
倒れているのが荒井さんじゃなくて、もっと邪悪な存在に思えた。

逃げよう。
ここから逃げてしまおう。
僕が駆け出すより一瞬早く、風間さんの鋭い声がした。
「ここまで来て、逃げるなんて許さないよ。
さあ、そっちの腕を持つんだ」

目が真剣だった。
逆らったら、僕まで殺されるかもしれない。
僕は吐き気を我慢して、腕を持ち上げた。
交代しながら焼却炉にたどり着くまで、どれくらい時間がかかったろうか。

もちろん、焼却炉の火は消えていた。
風間さんが、ライターを取り出した。
焼却炉に点火する。
火がメラメラと燃え上がり、生き物のように揺れ動いた。
「さあ、この中に入れるんだ」
そういった風間さんの顔が、炎の照り返しで悪魔のように見えた。

僕たちは断れずに、荒井さんの体を焼却炉に放り込んだ。
パアッと火の粉がたち昇る。
僕たちは、本当に犯罪者になってしまった。
今朝までは普通の高校生だったのに……。

現実のできごととは思えなくて、頭がくらくらした。
焼却炉の扉を、風間さんが閉めようとしている。
でも、ちょうつがいが固くて閉められない。
「チェッ、どうなっているんだ……」
つぶやいてのぞき込んだそのとき。

焼却炉の中から、荒井さんの上半身が飛び出した!
髪やシャツに、もう火が燃え移っている。
火ぶくれのできた顔で、荒井さんはニヤリと笑った。
そして風間さんを抱きすくめ、炎の中に引きずり込んだ!

風間さんの悲鳴が響いた。
どうしよう?
1.風間さんを助ける
2.荒井さんを助ける