学校であった怖い話
>隠しシナリオ1(坂上修一)
>A3

「あのう、僕は新聞部のものなんですが。
それで、旧校舎が取り壊されるのを取材するようにいわれて……」
「そんなこと聞いてないぞ」
現場の人は、困った顔をして腕を組んだ。
「……まあ、いいか。邪魔はしないでくれよ」
いわれて、僕はお辞儀をした。

僕は、ペシャンコになった旧校舎の残がいに近づいていった。
こうなってしまうと、もう怖いけれど趣のあった旧校舎は見る影もない。
ただのゴミの山だ。
「おーーーーい! 死体だ! 死体があるぞおっ!!」

ほど近いところで、大きな声が上がった。
僕は、心のどこかでそれを期待していたのかもしれない。
周りがざわめく中、はやる気持ちを抑え、僕も声の上がった場所に向かっていった。

「……まだ死んだばかりの仏だ」
「この学校の生徒じゃねえのか?」
「一……二……三……六人もいるぞ」
みんなは、死体を取り囲んで、いかにも同情的な眼差しを向けていた。

学生服を着た死体は六つあった。
男性が四人。
女性が二人。
それらが、折り重なるようにして、がれきの廃墟の中に埋まっていた。

死体は、どれもきれいだった。
うつ伏せになっているためか、顔は見えない。
けれど、僕にはそれが誰なのかわかっていた。
わざわざ顔を見なくても、これが誰の死体なのか、僕にはよくわかっていた。

「警察を呼べ!」
誰かが叫んだ。
そのあと、遠くのほうからも声が上がった。
「こっちには白骨があるぞ! 何だか、ものすごい数の白骨が埋まってるぞ!」

「いったい、なんちゅう学校だ、ここは……」
あきれるやら驚くやら、人々の声が飛びかっている。
この旧校舎は、いったい今まで何人の人の命を食ってきたのだろうか。
とにかく、あの六人は現実にいたのだ。

少なくとも、旧校舎の中には、彼らの存在があったのだ。
彼らの身元は確認されまい。
けれど、彼らは確かにいたのだ。
僕が今、現実の世界にいるのであれば……。
僕は、胸のつかえがようやく取れたので、家路につくことにした。

そして家に帰ったあと、改めて考えた。
あの旧校舎には、我々とは違う世界の人々が住んでいるんじゃないかと。
それは、我々がこうして暮らしている世界とは全く別の世界。
長い間使われなかった旧校舎に、きっと得体の知れない世界の住人が住みついてしまったのだろう。

そして、彼らはあの場所で生まれ、暮らし、そして死んでいくのだ。
旧校舎の中で生きる彼らは、旧校舎がもうすぐ壊れることを知っていたに違いない。
それで、何かを伝えたくて僕にあんな幻影を見せたのだろう。
僕は、きっと旧校舎に住む人々に魅入られたために、不思議な体験をしたのだろう。

……僕は、ふとそんなことを考えた。
僕の考えは間違っているだろうか?
やはり、僕の頭が変になって幻覚を見ているだけなのだろうか?
仮面の少女は、僕が生み出した空想の産物なのか?

……夜もふけた。
どうしよう。
1.もう、寝る
2.本を読む
3.勉強でもする