学校であった怖い話
>隠しシナリオ1(坂上修一)
>H3

僕は無視して歩き続けた。
「おい!」
現場の人が、あわてたように僕の肩をつかんだ。
その瞬間、パリパリッと乾いた音がした。
「うわあっ!?」
感電したように、現場の人は手を離した。

自分の意志ではないように、僕はフラフラと歩き続けた。
ゴミの山と化した旧校舎に近づく。
自分が何をしているのか、わからなかった。
ただ、ガレキを乗り越え、残がいの中に入っていかなければならなかったのだ。

誰かが叫んでいたが、気にならなかった。
そして、ある地点に来た。
僕は、自分が何をすべきか、わきまえている人のように落ち着いて、そこのガレキを持ち上げた。
ここだ。
この下だ。

頭の中で、誰かの声がしていた。
その時、僕はグイッと引っ張られた。
「危ないだろう!」
現場の人たちだ。
たくましい腕で、僕が逃げないように、捕まえている。

「こんなの、よく持ち上げたなあ」
別の人が感心したように、僕の作った穴をのぞき込んだ。
その顔が、サッと青ざめた。

「し……死体だ! 死体があるぞ!!」
「何だって!?」
作業をしていた人たちが、ざわめいた。
でも僕に、驚きはなかった。
なぜか、最初からわかっていたような気さえした。

「……まだ死んだばかりの仏だ」
「この学校の生徒じゃねえのか?」
みんな、だんだんに集まってきた。

学生服を着た死体は六つあった。
男性が四人。
女性が二人。
それらが、折り重なるようにして、がれきの廃墟の中に埋まっていた。

死体は、どれもきれいだった。
うつ伏せになっているためか、顔は見えない。
けれど、僕にはそれが誰なのかわかっていた。
わざわざ顔を見なくても、これが誰の死体なのか、僕にはよくわかっていた。

「警察を呼べ!」
誰かが叫んだ。
そのあと、遠くのほうからも声が上がった。
「こっちには白骨があるぞ! 何だか、ものすごい数の白骨が埋まってるぞ!」

「いったい、なんちゅう学校だ、ここは……」
あきれるやら驚くやら、人々の声が飛びかっている。
この旧校舎は、いったい今まで何人の人の命を食ってきたのだろうか。
とにかく、あの六人は現実にいたのだ。

少なくとも、旧校舎の中には、彼らの存在があったのだ。
彼らの身元は確認されまい。
けれど、彼らは確かにいたのだ。
僕が今、現実の世界にいるのであれば……。
僕は、胸のつかえがようやく取れたので、家路につくことにした。

そして家に帰ったあと、改めて考えた。
あの旧校舎には、我々とは違う世界の人々が住んでいるんじゃないかと。
それは、我々がこうして暮らしている世界とは全く別の世界。
長い間使われなかった旧校舎に、きっと得体の知れない世界の住人が住みついてしまったのだろう。

そして、彼らはあの場所で生まれ、暮らし、そして死んでいくのだ。
旧校舎の中で生きる彼らは、旧校舎がもうすぐ壊れることを知っていたに違いない。
それで、何かを伝えたくて僕にあんな幻影を見せたのだろう。
僕は、きっと旧校舎に住む人々に魅入られたために、不思議な体験をしたのだろう。

……僕は、ふとそんなことを考えた。
僕の考えは間違っているだろうか?
やはり、僕の頭が変になって幻覚を見ているだけなのだろうか?
仮面の少女は、僕が生み出した空想の産物なのか?

……夜もふけた。
どうしよう。
1.もう、寝る
2.本を読む
3.勉強でもする