晦−つきこもり
>一話目(真田泰明)
>H6

ははっ、まだ葉子ちゃんには、彼の気持ちがわからないだろうな。
あいつ程ではないにせよ、多かれ少なかれ恋するとこうなるんじゃないかな。
俺は、あいつが哀れだったよ。
しかし、彼はそれを隠すかのように黙々と仕事をしていた。

(立ち直ってくれたんだな…………)
俺は嬉しかった。
しばらくその様子を見ていた。
(もう彼は大丈夫だ)
そう確信すると俺は自分の仕事へ戻ったんだ。
しばらく、平穏な時間が続いた。

その夜中……。
俺はソファーで少し仮眠をとろうと席をたった。
部屋を見回すと居眠りをしている奴もいる。
もう一度、風間を見た。

「あれ、風間がいない……………」
いつの間にか席には風間がいなかった。
(帰ったのか)
部屋の中をくまなく見渡したが、彼はいなかったんだ。
(仮眠か……………)
俺はやな予感がした。

(でも、彼の仕事ぶりを見る限り、立ち直ったはずだ)
自分にそういい聞かせた。
しかし、そのままソファーで仮眠する気にはなれなかったんだ。
(そういえば風間の奴、ときどき倉庫に行くっていってたな………)
俺は部屋を出た。

ビルに人気はなく、シーンと静まり返っていた。
落ち着きなく無目的に歩いていたつもりだったが、気がついたときには倉庫のドアの前にいた。
(このドアの向こうに風間がいるのか…………)
俺はちゅうちょした。

もしいたとしても何を話していいのか、思いつかなかったからだ。
しかし、俺は意を決してドアを開けることにした。
中はひっそりとしている。
俺は奥へ足を進めた。
倉庫の中は、物に阻まれ見通しがきかない。

さらに奥へ行く。
すると人影が見えた。
(風間だ………………)
あの絵の前にいる風間の背後に立った。

こんなとき、葉子ちゃんだったらどうする。
声をかけるかい。
1.声をかける
2.黙ってみている