晦−つきこもり
>一話目(鈴木由香里)
>A6

そう、腕だよ。
どこを探しても、マネキンの腕のパーツだけが、見つからなかった。
この倉庫で、探し出そうっていうのに無理があったんだよ。
私も、いいかげん嫌になってあきらめようと思った時……。

「あったー、腕があったよー」
嬉しそうな、松尾さんの声が聞こえたんだ。
彼女は隅の方で、マネキンの腕を大きく振ってる。
彼女の背後は薄暗く、手に持ったマネキンの腕が、ぼんやりと浮き上がって見えた。

「これで、上に戻れるね」
ほっとした次の瞬間……!

彼女の背後に、無数の手が!!
それらは、薄暗闇の中で、ぼんやりと光りながら、揺らめいてた。
松尾さんは背後の異常に気付かないで、にこにこしてる。
もし、葉子がこの時の私の立場だったら、どういう行動に出る?

今度は、私の場合なんて考えなくっていいよ。
葉子自身に置き換えて答えて。
1.松尾さんに、「後ろを見て!」と、教える
2.何もいわずに彼女を連れて逃げる