晦−つきこもり
>一話目(鈴木由香里)
>I6
そう、足だよ。
どこを探しても、マネキンの足のパーツだけが見つからなかったんだ。
あの倉庫で、探し出そうっていうのに無理があったのさ。
私も松尾さんも、いいかげん嫌になってきてた。
「あきらめようか……」
松尾さんは、そうとう疲れてたみたい。
「そうね」
私も力なく返事したんだ。
二人ともくたくただった。
足は見つからなかったけど、その他はそろっていたからさぁ、デザインしだいで、どうとでもごまかせると思ったんだよ。
マネキンは重かったけど、パーツが足りないぶん、覚悟してたほどじゃなかった。
それでも、おしゃべりしてる余裕はなくて、二人は黙って荷物を運んだよ。
するとさぁ……。
私たちの後ろの方から、ズルッズルッていう何かを引きずるような音がするんだ。
私たちが止まると、その音も止まる。
振り返っても、薄暗くてよく見えない。
私たちが歩きはじめると、また音が聞こえてくる。
っていうふうに、何かが私たちを追いかけてきているようだった。
松尾さんも、その音に気付いているのか、だんだんと早足になってた。
もちろん、私も。
でもね、その音は遠ざかるどころか、どんどん近づいてきてた。
ズルッ……ズルッ……。
すぐ後ろで音がしてる。
どうしよう?
ここまで近くにいるのなら、何か見えるかもしれない……。
でも、こんな時に振り向くのは危険かもしれないし……。
私は、自分の好奇心を押さえるのに、必死だったんだから。
そんな時よ!
「きゃーーーーーーーっ!!」
隣りで悲鳴が上がったの。
後ろを見たくてうずうずしてたのは、私だけじゃなかったんだ。
松尾さんも、かなり好奇心が強かったんだよね。
そして、彼女は振り向いてしまい、彼女の悲鳴を聞いて、私も振り向いた。
そこには……!
床に倒れてる男の姿があった。
その男は、腰から下が消えていて、二つの腕で這うようにして、こっちに向かって来る!!
私も松尾さんも、いっせいに走り出したよ。
出口のドアは目の前なのに、なかなかたどり着けない。
手に持ってたマネキンも、いつのまにか放り出しちゃってた。
男の手が、もう自分の足をつかむんじゃないかっていう気さえする。
それでもどうにか、出口にたどり着いたんだ。
でも、まだ安心はできない。
まだここは地下なのだから……。
早く、ここから脱出しないと!
方法は二つ。
どっちがより安全に思える?
1.階段を使う
2.業務用エレベーターを使う
◆最初の選択肢で「2.素敵な恋がしたい」を選んでいる場合
2.業務用エレベーターを使う
◆最初の選択肢で「3.真面目に勉強したい」を選んでいる場合
2.業務用エレベーターを使う