晦−つきこもり
>一話目(鈴木由香里)
>Y4
……葉子、何か知ってんじゃん?
それともただのカン?
ま、どっちでもいいや。
私は、あまり好きじゃなかったバイト先の主任を選んだんだ。
宮本っていったよ。
何でって……、彼が臆病なのをよーく知ってたからさ。
ごちゃごちゃと理屈をこねて、自分は行かないって頑張ったけど、私がそんなこと許すはずないじゃん。
強引に、彼を業務用エレベーターに乗せたよ。
もちろん私も一緒にさ。
……エレベーターの中って、完全な密室じゃん。
突然故障して、閉じこめられたりしたら……。
って考えたりしない?
私たちの乗ったエレベーターは、それはもう古くて、汚くて、いつ壊れてもおかしくないようなオンボロだったんだ。
ゴォーッという機械音も、時折、大きくなったり小さくなったりで不安感をあおる。
主任は、その音にびくびくしながら、天井のライトを気にしてたみたい。
そのライトも、もう寿命がきれてるんだといわんばかりに、しきりに点滅してる。
最初のうち、私はじっと黙ってた。
何の話をしようか考えてただけなんだけどさ、それが、彼の不安を、さらにあおったみたいだよ。
だから、頃合を見計らって一つの話を聞かせてやったんだ。
エレベーターにまつわる怖い話を……。
……エレベーターの事故で、一人の男の子が死んじゃったんだって。
エレベーターの箱、つまり私たちの乗る場所のことだよ。
彼は、その箱の下に落ちて下敷きになったんだ。
でもさぁ、驚いたことに誰も、彼が死んだことに気付かなかったんだってさ。
その子の友達も、
「あいつ、この頃見ないな」
ぐらいにしか思ってなかったし、親は親で、
「また、遊びまわってるんだ」
としか考えてなかったんだって。
一人暮らしってこういう時、怖いよね。
やっと彼が発見された時には、ほとんど白骨化してた。
……っていう話。
それでさぁ、その子が発見されるきっかけになったのが、エレベーターに起こった怪現象だったんだ。
葉子は、エレベーターに起こる怪現象っていったら、どんなのを想像する?
1.幽霊が出る
2.原因不明の事故が増える