晦−つきこもり
>一話目(鈴木由香里)
>AB2
へぇ、葉子ったらそんなこと考えてんの?
あんた女子校行くんでしょ。
ただでさえ、恋のチャンスが少ない所に行くのに、それはちょっと苦労すると思うな。
学校外で恋人を見つけないといけないじゃん。
もっとも葉子が、恋人が女の子でもいいっていうんなら、別に止めないよ。
私、その辺のこだわりはないからさ。
じゃあ、当然ながら高校生になったら、まず一番に好きな人を作ることだね。
それとも、もうすでにいるの?
あーあ、真っ赤になっちゃって。
そうだなぁ……。
じゃあ、恋人たちのデートコースに一度は入るっていう……、デパートにまつわる怖い話にするよ。
この中で、デパートに行ったことのない人はいないよね。
こんな田舎にだって、駅前にはデパートが一軒建ってるじゃん。
食料品から、衣類、電化製品まで生活に必要な物は、ほとんど手に入る場所。
これは、私が、デパートでバイトした時の話だよ。
一昨年の年末、私はとあるデパートに、ディスプレイの仕事で行ったんだ。
Tデパートってことにしとこう。
名前を教えたんじゃ面白くないからさ。
TデパートのN町店。
さあ、みんなも自分の近くに、それらしいデパートがないか考えて。
OK?
これで行くよ。
N町は、都心を離れた郊外の小さな町だったんだけど、最近、ベッドタウンとしての再開発が始まったとかで、想像してたよりも賑やかな所だった。
といっても、真新しく整備されてるのは駅前のロータリー付近と、山を切り開いて建てられた住宅群ぐらいで、町全体としては、まだまだ開発途中ってとこ。
その町の中央にあるTデパートは、少々時代遅れの古くさーい建物だったよ。
いつの頃に建てられたのか、かなりどっしりとした感じの外観は、整備された町並みには不釣り合いなくらい薄汚れてた。
あれは、忘れもしない。
十二月二十五日、日曜日のこと……。
私はその日を狙ってたんだよ、忘れるわけないじゃん。
店内の改装や、ディスプレイの取り替えって、定休日にすることが多いからさ。
年末の忙しい時期なら、休日返上は確実だよね。
私は、営業時間後のデパートに、興味があったの。
あーっ、みんな笑ってるな。
好奇心旺盛だっていいたいんでしょ、どーせ。
『いらぬ好奇心は身を滅ぼす』
わかってるって、それくらい。
別に私、身を滅ぼしてもかまわないもんね。
女の子なんて、みんなこうだと思うけどなぁ……。
どう?
葉子は好奇心の強い方?
それとも、物事に対してあんまり興味を示さない方?
1.好奇心の強い方
2.あんまり興味を示さない方