晦−つきこもり
>一話目(藤村正美)
>A2

そう、それじゃあ私の感じた落ち着かなさも、わかっていただけるわね。
ところで、私が見たものを教えましょうか。
花が咲き乱れる丘と、その上に建っている古い洋館。
遠くには、青く光る山脈が見えるのです。

とても美しいんだけれど、どこか不吉な感じがする風景。
変でしょう?
でも、もっと奇妙なことに、私には、そんな風景を見た記憶がないんです。
こんなことってあるのかしら?
見たこともない風景が、頭の中に浮かぶなんて。

「どうかした?」
ハッと我に返ると、中山さんが不思議そうに私を見ていました。
初めにそんな失敗をしてしまったのに、中山さんは、私を気に入ってくださいました。
正美さん、正美さんって可愛がってくださって。

もしかしたら、私を孫と思ってくださったのかもしれませんわね。
ありがたいことですわ。
それとも、病気のせいで気弱になっていたんでしょうか。
どちらだと思います?
1.気が弱くなっていただけ
2.本当に正美を気に入っていた