晦−つきこもり
>一話目(藤村正美)
>D3

そうですわよね。
私も、そう思いますわ。
そんなある日のことでした。
ベッドに寝ていた中山さんが、急に変なことをいい出したんです。
「私は、本当は病気じゃないのよ」
もちろん、冗談だと思いました。

だって、彼女の血圧や体温を毎日計っているのは、私たちですもの。
仮病だとしたら、真っ先に気づいているはずですわ。
でも、中山さんの顔は、真剣そのものだったんです。

「信じてくれていないんだね。だけど私は、本当に病気なんかじゃないのさ。私はね、毒を飲まされたんだよ」

細くやつれた腕が、私の白衣をつかみました。
憑かれたような目の輝きは、本気で信じているという証拠に思えたのです。

「……わかりました、中山さん。
あなたがそういうなら、信じますわ」
結局、私はそういうしかなかったんですわ。
それ以上、興奮させたくなかったですし。
彼女の身体のことを考えたら、それが一番いいと思ったんです。

葉子ちゃんも、私の立場だったら、同じことをするでしょう?
1.する
2.しない