晦−つきこもり
>一話目(前田良夫)
>A3

オッケー、それでいいぜ。
あの写真にはさ、髪が長くて、白い着物を着た女が写ってたんだよ。
あのとき、そんな女がいなかったことは、俺がよく知ってる。
ってことは、やっぱりこれが『わらし様』なんだ。

変な写真が撮れたのは感動したけど、あんまり怖くなかったな。
だって、妖怪マンガに出てくるようなヤツでも、ぐちゃぐちゃオバケでもなかったし。
でもまあ、第一段階は成功だ。
俺たちはウキウキしながら、計画の第二段階に進んだのさ。

第二段階って、立川の家に泊まることだよ。
だってさ、わらし様は夜中になると、何人も出て来るっていうんだぜ。
これを写真に撮れば、グループ研究どころじゃない。
新聞にだって載るかもしれないからな。

男は俺と立川と、もう一人小坂って奴。
それに女子二人の、全部で五人だった。
女子なんて邪魔なだけなんだけど、班行動だからな。
で、俺たち男は、例の仏間に布団を敷いてもらって、寝ることにしたわけ。

もちろん女子は、ふすまの向こうの部屋に寝かせたぜ。
眠るつもりはなかったんだけど、ついウトウトしちゃってさあ。
気がついたら、もう真夜中だったんだ。
明かりもいつの間にか落としてあって、オレンジ色の豆電球がポツンとついてた。

何で、そんな時間に目が覚めたかっていうと……。
実は俺、便所行きたくなったんだよな。
だけど、立川の家の便所って、暗い廊下の先にあるんだ。
ちょっと不気味っていうか、怖いっていうか……わかるだろ。

葉子ネエだって、夜に便所行くの、怖いよな。
1.怖い
2.少し怖い
3.全然、平気