晦−つきこもり
>二話目(前田和子)
>A1

次は私?
ああよかった、早く話したくてしょうがなかったのよ。
この村って、のどかなようで実はいろんな話があるんだから。
中でも群を抜いているのが、ヒナキちゃんの話ね。
……何かね、この辺には変な私有地があるんだって。

ちゃんとした建物が建っているわけでもないし、駐車場にもしていない所。
空き地って感じね。
でも、ちゃんと誰かの土地になっているんだって。
雑草がぼうぼうに生えてて、本当に放っとかれているらしいんだけど。

そういう所って、かまわず入り込んで遊んだりする子がいるのよね。
でもねえ、どうして土地を放ったらかしにしとくのかしら。
私だったらでかい家でも建てるわよ。
何でもそこって、けっこう広い土地らしいし。

さる財閥の土地だとか、誰かが死んで売れなくなった土地だとか、いろんな噂があるわよ。
でも、どれが本当なのかはわからない。
ただ、その私有地に関して、一つだけ共通している噂があるのよ。

……ヒナキちゃんって女の子が出るんだって。
出るなんて失礼かしら。
どこの子だかわからないんだし。
ヒナキちゃんって、高校生くらいのかわいい女の子なんだって。
でも、ただの女の子じゃないらしいの。

いつも真っ青なセーラー服を着ているそうよ。
青いリボンに、青いスカート。
青いセーラーの襟。
普通ないわよねえ。
そんな服。
でも、それがすごくよく似合ってるんだって。

そういう子が、よくわからない空き地みたいなところにぽつんといるわけ。
あー、寒気がするわ。
青いセーラー服を着た、かわいい女の子。
髪はやわらかな黒で、肩までかかっているの。

……ちなみに、あんたたち。
こういう話を聞くと、確かめたくなる方かしら?
1.確かめたくなる
2.ならない
3.何ともいえない