晦−つきこもり
>二話目(前田和子)
>A2

ちょっと、ちょっと!
そんなの駄目よ。
よくあるじゃない。
子供が何かの事件に巻き込まれて、怪我したり亡くなったりするニュース。
あれ嫌なのよ。
もう、すっごく嫌なの。

ここで報道されているのが自分の家族だったら……って、つい想像してしまうわけ。
葉子ちゃん、そういうニュースに出たいの?
ヒナキちゃんって、本当に危険なんだから。

……葉子ちゃんだけじゃないわ。
あんたたち、この話を聞いたからって、面白がってヒナキちゃんに会いに行ったりしちゃ駄目よ。

それだけは、はっきりいっておくからね。
その代わり、この話は自分が体験している気になって聞くといいわ。
良夫がこんどいく中学の子の話よ。
実は、去年あったことなんだけど。

三年生に、田崎君と秋山君って子がいたんだって。
すごく仲がよかったんだけど、二人ともとにかくうるさくて。
よく先生から注意されたりしていたそうよ。
いわゆる悪ガキよね。
明るくて、クラスでは人気者だったらしいんだけどね。

「なあ、秋山。ヒナキちゃんの噂、知ってるか?」
「え、うん。たしか、かわいい女の子なんだって? 高校生くらいの。僕達より年上だよね」
「その女、怖いって話だぜ。どんな子なんだろうな?」
「田崎……。もしかして、見に行きたいとか?」

二人は、どこかでヒナキちゃんの噂を聞きつけたのね。
かわいいんだけど、怖いお姉さんが私有地に出るって。
だから、本当に出るかどうか見に行ったの。

初めて私有地に忍び込んだ時は、ヒナキちゃんに会えなかったんだけど。
二人は諦めなかったの。
何回も通っているうちに、ついに会えたのよ。
「……おい、あの子がヒナキちゃんじゃないか?」

私有地の草むらから、青い服が見え隠れしていてね。
田崎君は、秋山君を小突いたわけ。
1.近寄る
2.様子をみる
3.帰ろうという