晦−つきこもり
>二話目(山崎哲夫)
>A7

狸と間違えられて、撃ち殺されるなんてとんでもない!
そう思った自分らは両手をあげて、撃つな、人間だって叫んだんだ。
でもその男達には、狸がしゃべったぞって驚くばかりで、いっこうに通じないんだよ。
それどころか、自分らに向かって、銃を撃ってきたんだ!

「うわっ」
弾は自分の右脇をそれて、飛んでいった。

自分らは、命からがら逃げ出したよ。
なんで、自分らが狸なんだ。
あいつらには、自分らが狸にでも見えるのか!
みんな口々にそういった。
みんないらだちを隠せない。
後ろからは、さっきの男達の声が聞こえてくる。

男達は、見つけたら撃ち殺せなんていっているんだ。
自分らは、必死に逃げ続けた。
銃声が轟き、鳥が一斉に飛び立つ。
はずれた弾丸が、自分らの脇を音を立てながら飛んでいった。
自分らは、できるだけ体勢を低くして走り続けたんだ。

後ろでは、銃を持った男達の声が飛び交っている。
自分達は、必死になって逃げたんだけどな。
どんどん追いつめられていくんだよ。
どう考えても、銃を持った人達が増えているとしか思えないんだ。
自分らの逃げる先に、必ず先回りしているしな。

追いかけてきている人達が、先回りすることなんて考えられなかった。
確実に二、三十人はいるみたいなんだ。
仲間が、逃げながら口々にいうんだ。
あいつら、冗談でやっているみたいじゃないぞって。

確かにそうだった。
男達は、本気で自分らを撃ち殺そうとしているんだ。
しかも、自分らを狸だといっているし……。
でもその時は、本当に狸にでもなった気分だったよ。

わかるかい、葉子ちゃん。
だんだんと追いつめられていく気持ちが!
どっちへ逃げても、自分らの前に狩人が現れるんだ。
もうどうやっても逃げ切れないような気がしてくる。
それでも、逃げ続けるしかないんだよ。
死にたくなければな。

少し下ったところを、すべりおりたときだった。
いきなり、自分らの前に、銃を構えたごつい男が立ちふさがったんだ!

銃口は、確実に自分らの方を向いている。
さあ、どうする、葉子ちゃん!
1.かまわずつっこむ
2.その男をやっつける
3.反対方向へ逃げる