晦−つきこもり
>二話目(山崎哲夫)
>A8

ふ〜ん。
自分らも、そのままつっこんでいったんだ。
運良く、その男を振り切って逃げることができた。
しかし……。
弾丸は、自分のすぐ脇を飛んでいった。

「動くな!」
自分らは、もうこれ以上動くことができなかったよ。
あちこちで、見つけたぞという声が聞こえる。
自分らは、あっという間に囲まれてしまったんだ。
「やぁ、やっと捕まえたのかい?」

後ろを振り向くと、そこには風間が立っていたんだ。
自分は、天の助けだと思ってな。
すぐに風間に話しかけたんだ。
「た、助けてくれ、風間さん。この人達が、自分らを狸だなんていって、襲ってくるんだよ」

「な、なんだ!? この狸!
いま、風間っていったよな。なんで僕の名前を知っているんだ!?」
「え……」

「なんて生意気な狸だ。狸の分際で、この風間様の名前を、気安く呼ぶなんて……。うちに泊まっているお客さんが、森に行くっていったから、心配で見に来たら、こんな狸がいたなんて。よかったよ、お客さんになにかある前に見つけることができて」
そんなことをいうんだよ。

自分は、焦っていったんだ。
「ちょっと待ってくれ!!
自分らが、その客じゃないか、なにをいっているんだよ!」
すると、風間は、大げさなくらいに驚いて、叫んだんだ。

「うわっ!
なんて狸だ。僕がいったことを聞いて、あんなこといっているよ。
なんて悪賢い狸だ。早く殺してしまった方がいいな。さ、殺ってくれ……」
冗談じゃないよな。

頭が変だとしか思えないよな。
それでな、自分は、とっさに叫んだんだ。
「待った!!
自分が今から、風間旅館の客だってことを、証明するから!」
ってな。

「ほう……。そいつは、おもしろいね。どんな芸を見せてくれるんだい?」
さて、ああは、いってみたものの、どう証明したらいいだろう……。

葉子ちゃんだったら、どうする?
1.昨日の夕食の献立を話す
2.今朝の朝食の献立を話す
3.風間旅館のことを細かく話す