晦−つきこもり
>二話目(山崎哲夫)
>J6

自分らもな、気にせずに進んでいったんだよ。
あいつ、頭がおかしいんじゃないのかなんて話しながらな。
しばらく進んでいるとだ。
また人の気配を感じ始めたんだ。
さっきと違ったのは、さらに多くの人達がいるみたいだったってことだがな。

おかしい!
ここは、人が滅多に入らないところだったんじゃないのか!?
そう思っていたときだ。
向こうの方に人影が見えたんだ。
自分らを見つけたのか、何かを叫んでいるみたいだった。

何だろうなって、見ているとな。
その男は、自分らの方に走って来るんだよ。
手には、猟銃が握られていた。
後ろから、狸はこっちだなんて声が聞こえてくる。
振り向いてみるとな、その人も銃を持っていて自分らの方に駆け寄って来ているんだ!

自分らは、嫌な予感がした。
さっきの風間といい、この人達といい、自分らのことを狸といっているんじゃないのかって気がしてきた。
気がつくと、自分らは駆け出していたよ。
本能的に危ないと感じたんだ。

逃げたぞ! と騒ぐ声がする。
やはり、自分らを追いかけてきているみたいだ!
あいつら、自分らを狸と間違えているんじゃないのか!?
仲間が、走りながら怒鳴り散らした。
そんな馬鹿なことって……。

自分は振り向いて、その人達に話しかけてみたんだ。
何の冗談のつもりだ!
自分らは、狸じゃないぞ! ってな。
するとな、その男達は、狸がしゃべったぞ! なんていいながら、本当に驚いているんだよ!

そして、銃口を自分らに向けたんだ!!
冗談じゃない!
自分らは、ふたたび駆け出したんだ。

自分達は、必死になって逃げたんだけどな。
どんどん追いつめられていくんだよ。
どう考えても、銃を持った人達が増えているとしか思えないんだ。
自分らの逃げる先に、必ず先回りしているしな。

追いかけてきている人達が、先回りすることなんて考えられなかった。
確実に二、三十人はいるみたいなんだ。
仲間が、逃げながら口々にいうんだ。
あいつら、冗談でやっているみたいじゃないぞって。

確かにそうだった。
男達は、本気で自分らを撃ち殺そうとしているんだ。
しかも、自分らを狸だといっているし……。
でもその時は、本当に狸にでもなった気分だったよ。

わかるかい、葉子ちゃん。
だんだんと追いつめられていく気持ちが!
どっちへ逃げても、自分らの前に狩人が現れるんだ。
もうどうやっても逃げ切れないような気がしてくる。
それでも、逃げ続けるしかないんだよ。
死にたくなければな。

少し下ったところを、すべりおりたときだった。
いきなり、自分らの前に、銃を構えたごつい男が立ちふさがったんだ!

銃口は、確実に自分らの方を向いている。
さあ、どうする、葉子ちゃん!
1.かまわずつっこむ
2.その男をやっつける
3.反対方向へ逃げる