晦−つきこもり
>二話目(山崎哲夫)
>Y7

そうだ! そうだろ? 葉子ちゃん!
葉子ちゃんは、そうじゃなきゃいけないよ。
自分たちも、追いかけていったんだ。
大事な仲間を見捨てることなんて、できないからな。

それでな、自分らは、急いで、そいつのことを追いかけていったんだよ。
でも、もう遅かったんだ。
その時には、木の陰に隠れて、どっちの方へ歩いていったかわからなくなってしまっていた……。
自分らは、あちこちを捜しながら、歩いていったんだ。

「おーい、森川ぁーーーーっ」
そいつ、森川っていう奴だったんだけどな。
「森川ぁーーーーっ」
名前を呼んでも、返事がないんだよ。
おい、おい、ちょっとやばいんじゃないのか?そう思ったときだ。

自分の隣を歩いていた奴が、自分を呼んだんだ。
あわててそいつが指さしている方向を見てみたんだ。
するとな、森川が大きな木の下に立って、じっとしていたんだよ。

「おい、どうしたんだ!!」
自分は、すぐに声をかけてみた。
するとな、そいつはゆっくりと振り返って、そしていったんだ。
「小便ぐらい、ゆっくりさせろよ……」
そう、そいつは、ただ単に用を足すために、ちょっと奥の方まで入っていただけだったんだ。

がははははは。
おかしいだろ? 葉子ちゃん。
さんざん心配させといて、それだもんな。
自分らは、安心したよ。
あの狸にとりつかれたんじゃないんだと、わかったからな。
自分らは、その後は何事もなく進んでいったんだ。

でも、結局ロッククライミングができるような崖なんか、見つからなかったよ。
つまりロッククライミングができる崖があるってのは、嘘だったんだ。
自分らはがっかりしてな。
旅館に帰ることにしたんだよ。

帰りは、来たときと違うところを通って帰ったんだ。
あの狸の死骸の所になんか、近づきたくなかったからな。
幸い帰りは、何事もなく帰ることができたよ。
結局あの森には、何もなかったわけさ。

まさに、『骨折り損のくたびれ儲け』ってわけだ。
………………………………。
「……ちょっと待って、哲夫おじさん。今の話のどこが怖いわけ?」
私は、思わず哲夫おじさんにそういってしまったの。

すると、哲夫おじさんは……。
そう焦るなよ、葉子ちゃん。
話には、まだ続きがあるんだから。
それとも、もう自分の話は聞き飽きたのかい?
1.聞き飽きた
2.そんなことはない


◆3番目の選択肢で「3.宇宙人」を選んでいる場合
2.そんなことはない